2018年以降最高の試合を見せたドイツ、ポルトガルに勝利する

EURO2021初戦でフランスに敗れ、いきなり崖っぷちに追い込まれたドイツは本日ポルトガルと対戦した。場合によってはグループリーグ3位でも決勝T進出の可能性はあるとは言え、この試合は是が非でも勝利が求められる。ドイツは前回フランス戦と全く同じメンバー、システムで試合に臨んだ。ポルトガルはロナウドが未だ健在であり、言うまでもなく強敵だ。前回大会の優勝国でもある。

試合はいきなりドイツが圧倒的にボールを支配しいきなり猛攻を仕掛ける。前回のフランス戦はボールキープしながらもゴール前で脅威を与える事が出来なかったが、この日は様相が異なる。いきなり5分にゴーセンスがゴールを決めるが、これは僅かにオフサイドでぬか喜びとなった。

その後もポルトガルを圧倒するドイツだが、15分にコーナーキックからカウンターを喰らいワンチャンスで先制点を許してしまう。2018年W杯を彷彿とさせる嫌な展開に選手にもやや動揺が見える。

しかし、今回のドイツはここから立て直した。徐々に落ちつきを取り戻したドイツは35分に右サイドからのクロスをゴーセンスがダイレクトで折り返し、これがオウンゴールを誘発し待望の今大会初得点を上げる。更にその4分後も右サイド深くに侵入したキミッヒの折り返しが再びオウンゴールを誘発し逆転する。

更に後半に入ってもドイツが試合を支配し、51分はゴーセンスの低いクロスにハーヴァーツが飛び込み3点目、60分にはキミッヒのピンポイントクロスにゴーセンスが頭で決めて4点目を上げる。ポルトガルはやや戦意を消失した感があり、これでドイツの勝利は決まったかに見えた。

しかし、ここで炸裂したのが例のヨアヒム・レーヴの采配である。3バック中央のフンメルスに代えてチャン、この日獅子奮迅の活躍を見せるゴーセンスに代えてハルステンベックを投入する。この不可解な2名同時交代により、いきなりドイツはドタバタし始める。そして案の定セットプレーから67分に1点を返される。

ヨアヒム・レーヴもさすがにこれは危ないと思ったのか、チャンを中盤に上げてズューレを3バック中央へ投入、更には負傷明けのゴレツカをハーヴァーツに代えて投入し、ドイツは再び落ち着きを取り戻した。ポルトガルはレナト・サンチェスがポストに当てる惜しいシュートがあったが、結局試合はそのままドイツが逃げ切り4-2で勝利した。

圧倒的に攻め込みながら先制点を奪われると言う嫌な展開から、強豪ポルトガルに4ゴールを上げて逆転勝利した事は特筆に値する。2失点した事を問題視する人もいるだろうが、ドイツの守備がザルなのは私の中では計算に入っている。この日でケチをつけるとすればヨアヒム・レーヴの不可解な選手交代のみだ。

まあその選手交代もこの段階で使える選手と使えない選手がある程度目処がついたので、寧ろ肯定的に捉えて良い。少なくともズューレはバックアップとして及第点が与えられる出来であり、ゴレツカが復帰したのも大きい。チームの大きな成長が見えた試合でもあり、その意味でも非常に高く評価している。おそらく惨敗した2018年W杯以降、最高の試合だろう。

特に素晴らしかったのは左ウィングバックのゴーセンスだ。この左サイドは長年ドイツの穴の一つとして認知されており、これまでは別のポジションからユーティリティプレーヤーを引っ張ってくる事でしか解決出来なかった。ゴーセンスが定着したのも大会直前である。しかし、今日の試合で遂にドイツは信頼に足る本職の左サイドを発見したと言える。何より素晴らしいのはその得点力だ。今日は4点のうち3点に絡み、本人が自信を付けたのも間違いない。

更にもうひとり、私が評価を改めた選手として上げておきたいのが、トニ・クロースだ。正直言って私は2018年W杯のクロースには落胆した。幾らそのパスが正確無比で素晴らしくとも、セントラルMFとしてはあまりにも守備が緩すぎたからだ。

しかしフランス戦もそうだが、今日の試合もクロースは寧ろ守備で目立っていた。得意の配球は寧ろギュンドアンに任せ、時には汚れ役に徹しながら攻守の全体をマネジメントしている印象だ。このクロースの献身的な動きをみれば、今回のチームは少なくとも2018年のチームと異なるのは明らかだ。

ドイツは水曜日にグループリーグ最終戦となるハンガリー戦に臨み、この試合に勝利すれば決勝T進出が確実となる。ハンガリーはこのグループでは間違いなく最弱だが、フランスと引き分けるという健闘を見せており決して侮れない。唯一の不安はヨアヒム・レーヴが自らの策に酔って自滅する事だ。格下だからといって舐める事なく、これまで通りの不動のスタメンで堅実に勝ちにいくべきだろう。