嘘みたいな話だが、日本の名目GDPがドイツに抜かれるかもしれないという記事を読んだ。これがもし現実になるのなら、我々日本人にとっては由々しき事態になる。何故なら、ドイツの人口は日本のおよそ3分の2 しかない。(日本1億2500万人、ドイツ8400万人)。人口で大きく上回る中国やインド、ブラジルなどに抜かれるのとは訳が違う。
IMFの経済見通し(2022年10月)では、日本の2022年の名目GDPは4兆3,006億ドルで、ドイツは4兆0,312億ドルとのことで僅かに日本が上回る予想だが、この差を見れば既にかなり危ない状況と言える。
こういった比較はドル建てで行われるそうなので、だとすれば確かにドルに対する為替状況が大きく影響し、この状況も歴史的な円安に起因すると言われている。確かに昨年はユーロもドルに対して記録的に安くなったが、日本の円安ドル高はそれを上回るレベルだった。
また、インフレ率もかなり影響を受けておりドイツは昨年平均するとおよそ8%程度物価が上昇したが、日本は多分2%強くらいと推測される。
おそらく2022年に関して言えば、逆転されるか否かはこれら為替やインフレ率の状況で左右されると思われる。ただ、自国通貨の強さ、物価の高さというのはその国の経済力を如実に反映するものなので、単なる運の悪さで済ます事は出来ない。仮に2022年は日本がまだ上回るとしても、問題はこの先どうなるかだ。
為替に関して言えば、ユーロは昨年ECBが利上げして以降再びユーロ高へ状況は推移なり、現在は1ドル0,92ユーロまで回復している。日本円も現在では1ドル129円まで回復した。ただ、ざっと予想などを見る限り、相対的に見ればユーロよりも円がドルに対して安い状況が続きそうである。故にGDPを比較する上では日本にとって状況は良く無い。
またドイツのインフレ率は昨年10月に10,4%という数値を記録したが、12月は8,6%に下がり、おそらく今年は5%位だと予想されている。ただ、個人的には今後物価が以前の状態に戻る事は無いと思っている。ロシアからの安いエネルギーはもはや無くなっており、中国からの輸入も今後は減る。日本はまたデフレの状態に戻る可能性が高いと言われている。
そして肝心の経済成長であるが、ドイツは2022年に1,9%を記録した。歴史的なインフレ及び品不足の為、どん底の不景気が来ると予想されていたが、寧ろ予想以上に状況は好転している。今年は今のところ僅かなマイナス成長が予想されているものの、エネルギー価格が落ち着いてきた事もあり、状況は当初想定していたほど暗くはない。
もう一つ、長期的に大きな影響を及ぼすのが人口動態だろう。ドイツの人口は実は昨年過去最高を記録して8千400万人を超えた。これは言うまでもなく、外国からの移民の増加によるものだ。これらの多くは当然若い人たちである。つまり、ドイツは労働人口が増えている。
結論から言えば、2022年はまだ起こらないにしても、数年後にはドイツと日本のGDPが逆転する可能性は十分にあるように思える。そして、それは私個人にとっては全く喜ばしい事ではない。
何故なら、ドイツに限らず一般的に外国人というのは自国民よりも下に見られてしまうものだが、日本人に関して言えばそれなりに賢い国民だと思われている。それは日本が小さな島国なのにいわゆる経済大国と認知されている事が大きい。もしもGDPで人口が3分の2のドイツに逆転されるような事があれば、これは完全な「負け」のレッテルが貼られる事になる。つまり、我々日本人の評価は、海外ではドイツ人より下になる。
そのような状況を手をこまねいて見ている、或いは相も変わらず「日本すごい」的な自己陶酔に浸っている場合ではない。ドイツも日本と同様、資源大国ではなく自国の技術力で経済大国となった事も忘れてはならないだろう。