日本のドイツ語学習者にとって最も厄介なドイツ語のルールの一つに、名詞に性が存在する事が挙げられる。仮に名詞を主語(1格)で使う場合、男性名詞なら”der”、女性名詞なら”die”、中性名詞なら”das”が使われる。例えば「月」は男性名詞なので”der Mond”「太陽」は女性名詞なので”die Sonne”、「自動車」は中性名詞なので”das Auto”となる。
英語なら”The”ひとつで済むところが、ドイツ語はこのいわゆる”der”,”die”,”das”の3種類の冠詞がある。つまり名詞を覚えると同時に、その名詞の性も覚える必要がある。
正直これは非常に難しく、私の能力では普段使う単語でも覚え切れない、或いは覚えていても、いざ使うと間違った冠詞を使ってしまう事が多々あり、完全には超えられない壁だと認識している。とは言え、名詞の性を覚える上で参考になる規則があり、ドイチェヴェレの動画が非常に良かったので参考までに紹介したい
まずは以下のグループに属する単語は男性名詞である。
季節: Frühling, Sommer, Herbst, Winter
月: Januar, Februar, März, April…
曜日: Montag, Dienstag, Mittwoch, Donnerstag, Freitag, Samstag, Sonntag
方角: Ost, West, Nord, Süd
天気 : Schnee, Regen, Hagel, Orkan…
アルコール飲料:Wein, Wodka, Sekt, Prosecco, Whisky…但し例外として”Bier”は中性名詞
以下のグループに属する単語は女性名詞
数字: Eins, Zwei, Drei..
果物: Banane, Erdbeere, Kirsche, Mandarine, Orangeなど、但し例外として”Apfel”は男性名詞
以下のグループに属する単語は中性名詞
色: Schwarz, Weiß, Rot, Blau, Gelb…
アルファベット: a, b, c, d, e…
原材料となる物質 : Holz, Eisen, Metall, Kupfer, Silber, Gold, Aluminiumなど
更に語尾で名詞がどの性を持つかおおよその見当をつける事ができる。
以下の語尾の単語は殆どが男性名詞: -er, -ich, -ismus, -ist, -ling,-ig,-or,-ant,-är,-eur.
以下の語尾の単語は殆どが女性名詞: -ei,-heit,-ie,-ik,-in,-keit,-schaft,-tät,-ung,-ade.
以下の語尾の単語は殆どが中性名詞: -chen,-um,-lein,-ment,-tum,-um,-ma,-eau,-ett,-o.
更に、動詞が名詞化したもの、例えば”fahren”が”Fahren”、”kommen”が”Kommen”とそのまま名詞化したものは中性名詞、動詞が名詞化したものでも短縮されたもの、例えば”kaufen”が”Kauf”、”nutzen”が”Nutz”のようになった単語の多くは男性名詞になる。
また、単語の中には意味によって複数の性を持つものもある。例えば、”See”は意味が「湖」なら男性名詞だが、「海」なら女性名詞になる。他にも”Schild”は「盾」の意味なら男性名詞だが、「看板」なら中性名詞になる。外来語は非常に判断が困難だが、多くの場合2つの性を持っている。例えば”Event”とか”Laptop”などは、男性でも中性でも使える。
おそらく、これらの規則性を覚えれば完全ではないにしても、多くの名詞の性を把握出来るのではないか。因みに、覚える事が苦手な人の為に参考になる数字がある。ドイチェヴェレによるとドイツ語の名詞の性の46%は女性名詞、34%は男性名詞、20%が中性名詞だそうだ。
つまり、分からなければ女性名詞の”die”を使えば当たる確率が一番高い。外国語でコミニケーションを取るときはこのような適当さ、いい加減さも時に必要である。全てを正確に、正しくする事は不可能なのだ。確かに名詞の性を間違えても、それは多くの場合致命的なものにはならない。
とはいえ、大学の時の先生は、授業でドイツ語の名詞の性は日本に於ける漢字のようなものだと説明した記憶がある。仮にそうだとすれば、逆の立場で日本人が間違った漢字を使用されているのを見たら、あまり気分の良いものではないだろう。このブログで散々誤字脱字を放置している私が言うのもなんだが、やはりドイツ語が外国語だったとしても、名詞の性は出来るだけ正しく使いたいものだ。