ドイツのアウトバーンの有料化案、外国人差別を理由にEUから却下される

ドイツのアウトバーンは大都市圏を中心にくまなく網羅されており、その通行料は知っての通り無料である。これは車大国ドイツを象徴するインフラであり、実際にその利便性も高い。

因みに、アウトバーンはヒトラーが発明したと言われているが、ドイツ最初のアウトバーンは1932年ワイマール共和国、当時のケルン市長であり、のちに首相になるコンラート・アデナウアーによって開設された。しかし、例のヒトラーが自らがアウトバーン建設の創始者であることを演出するために、このアデナウアーのアウトバーンを国道に格下げした。これにより後世までアウトバーンの発明者はヒトラーとする通説が出来上がった。

それはさておき、この車大国ドイツのシンボルでもあり、長年無料で誰でも通行できたアウトバーンも遂に有料化が現実味を帯びてきていた。アウトバーンを有料化するという話はかなり前からあったようだが、より具体的になったのが2013年の連邦議会選挙でCSUがこれを公約に掲げた事によるものだ。

確かにドイツを除けばヨーロッパの隣国はすべて高速道路の通行料金を徴収しており、とりわけ我々バイエルンに住む人々の多くは南のオーストリアを通過してバカンスへ行き、その通行料を払っている。

なぜ、外国人は自国のアウトバーンを無料で使えるのに、自国民は他国の高速道路に料金を徴収されるのか。これをCSUは不公平だと捲し立て、ドイツのアウトバーンも有料化すべきだと訴えた。要するに、このアウトバーン通行料は外国からのドライバーからのみ徴収し、自国民からは実質徴収しないという不公平なものだ。

このCSUのプランを正確に言えば、ドイツのドライバーも一応は通行料を年間一括で払う。しかし、その分車両税を減額して相殺することで、実質負担にはならない。さもないと外国人差別としてEUの規定に触れてしまうからだ。この有料化案は通称”Ausländer-Maut”=「外国人通行料金」と呼ばれて国内でも揶揄されていた。

もっとも、このような狡猾かつあからさまな自国ファースト主義の政策は当然反対も多くあり、メルケルをはじめとした姉妹政党のCDUや当時も政権のパートナーだったSPDも大反対したが、CSUはこれを押し切りこのプランの実現間近まで漕ぎつける事に成功した。懸念されたEUの規定もセーフとなる見通しで、来年の2020年にはこのシステムは導入される見通しとなった。しかし、それに待ったをかけたのが隣国のオーストリアである。

オーストリアはこのドイツのアウトバーン有料化プランを外国人差別だとしてEUの法廷に訴え、これをもう一つの隣国オランダが支持した。オーストリアはこのドイツの有料化プランが実現した場合、自らも高速道路の料金を外国人用に値上げするするという報復措置を仄めかした。当然だろう、オーストリアの高速道路料金は外国人だけでなく自国民も払っている。

そして、この判決が先週下され、ドイツのアウトバーン有料化案はEUの法廷で退けられた。CSUはこの政策を党の威信をかけたプロジェクトとして推し進めており、完全に面目が丸潰れという形になった。もっとも、この判決に際して国民のCSUに向ける視線は冷ややかである。どう見てもアンフェアで、大したメリットもない。もともとその採算性も疑問視されていた。

更に隣国との関係が悪くなり、それこそオーストリアに報復措置などされれば、そのデメリットの方が遥かに大きい。アメリカの自国ファースト主義を批判しながら、結局は似たような事を隣国に押し付けるなど、首を傾げざるを得ない。

しかし、それだけでなく、残念ながらこのプロジェクト失敗には我々納税者にのしかかる実害がある。CSUは既にこの料金徴収のシステムの実現に向けて、既に業者に委託するなど着々と準備を進めてきた。つまり、そのコストや労力、時間が存在する訳だから当然頓挫したからと言ってタダでは済まない。

これも、オーストリアみたいに車にヴィネットをシールを張るだけのシステムならば大した金額にはならないかもしれないが、張り切って複雑かつハイテクなシステムにしたものだから、そのコストも当然安くはつかない。 その正確な金額は不明だが”Tagesschau”によると3憶ユーロとも言われている。

言うまでもなく、このような大衆迎合主義に走り、巨大な失敗プロジェクトを推し進めた中心人物、CSUゼーホーファーとドブリントの責任は重いだろう。 そして、当然のことながら現在交通相である同じくCSUのアンドレアス・ショイアーはこの件に対して釈明及び今後のプランが求められる。しかしおそらく、昨今問題視されている二酸化炭素排出の観点から言っても、ドイツのアウトバーン有料化は遅かれ早かれ来るだろう。