気がつけば今年はサッカーW杯の年だ。予選敗退した前回のロシアW杯、ベスト16に終わった昨年のEUROの名誉挽回が期待される。昨年より監督に就任したハンジ・フリックの下、ドイツは着実に安定感を取り戻している印象だ。メンバー自体は決して悪くはなく、ポテンシャル自体はある。昨日は今年最初のテストマッチ、イスラエル戦が行われた。
この試合は当初のふれ込み通り、普段主力となっている選手に加え、新戦力として期待のかかる若手、経験豊富だが長らく代表から遠ざかってかいた復帰組がミックスされたメンバーが投入された。ここである程度のメンバーの絞り込みを行う意図があるとみえる。
試合自体は開始早々から圧倒的にドイツが支配し、36分にコーナーキックからハーヴァーツがヘディングで先制、46分はミドルレンジやや左からのフリーキックの低いボールをFWのヴェルナーが合わせて追加点を決めた。
後半も前半同様ドイツが一方的に攻め込む展開が続く。交代で入ったミュラーがPKを外したものの、全体的には危なげない展開である。終了間際に新戦力のシュロッターベックが後方でボールを奪われ無用なPKを与えたが、これはGKトラップがストップし、最終的に2-0で勝利した。
イスラエルは決して強いチームでは無いので勝利は当然して、使えそうな選手、そうでない選手の見極めがついたと言う意味で、意義のあるテストマッチだったと言う印象である。
まず、この試合で私に最も印象に残ったのが、FCフライブルクの新鋭、ニコ・シュロッターベックである。私は正直この選手の事を全く知らなかったのだが、屈強な体格に加え非常に足元の技術が高く、左足から前線に素晴らしいパスを何度も通した。聞けばバイエルンやドルトムントが獲得を狙っているとされる逸材らしい。
シュロッターベックは終了間際に自陣深くでボールを奪われPKを与えると言うチョンボを犯したが、これは非難に値しない。若い選手なので寧ろこう言うテストマッチでミスをして勉強して貰う位で良い。ビッグクラブへ移籍し、チャンピオンズリーグの経験を積めば、このような凡ミスも無くなるだろう。能力的には申し分無い印象を受けた。
もう一人、比較的新しい選手で印象に残ったのが左サイドバックで先発したダビド・ラウムである。この選手、ドイツでは久しぶりに見るキックを得意とする選手で、この試合は何度も左サイドからの攻撃に絡み、クロスを供給した。新入りながらコーナーキックを任されている所を見ると、その質と精度はかなり信頼されているのでは無いか。
一方、この試合で残念ながらインパクトを残せなかったのが、復帰組のヴァイグルとドラクスラーだろう。確かヴァイグルはEURO2016でメンバーに選ばれて以来、実に久しぶりの選出で、ゴレツカが欠場した事で出場のチャンスを得た。しかし、昨日は寧ろ大事に行き過ぎてテンポを落としてしまった。
ドラクスラーは言わずもがな前監督レーヴに寵愛された代表の常連だったが、遂にブレイク出来ないまま28歳となった。今回は再び代表に定着するための絶好のチャンスだったが、やはり決定的な仕事が出来なかった。と言うより、ドイツはドラクスラーのポジションには比較的人材が充実しており、現在ここに割って入るのはかなり厳しい。
昨日先発したムジアラは19歳ながら鋭いドリブルとパスセンスでその能力を十分に披露し、ハーヴァーツは技巧派ながらヘディングも強いオールラウンドな能力を備えており、既に攻撃の中心的存在である。ここには更にサネ、ミュラー、ロイスなど控えているので層は厚い。
またこの試合では2得点をセットプレーから取っており、これはレーヴ時代から既に大幅な改善が見られる。特に2点目はギュンドアンが直接狙える絶好の距離と位置だったが、低い弾道をヴェルナーが方向を変えて意表を突いた。
火曜日は強豪オランダとの試合であり、両チームはおそらく現時点でのベストメンバーを投入し、本番への資金石とする筈である。確かおよそ2年前でのW杯予選での対戦ではオランダが地力の差を見せて4-2で勝利した。しかし、今回のドイツは新監督フリックの下着実に力を取り戻しつつあるので、好勝負が期待される。