ドイツに左派政権が誕生するか、緑の党がCDU/CSUを抜き支持率トップに躍り出る

欧州議会選挙の結果を受けてドイツの政界が再び騒がしくなって来た。昨年よりCDU/CSU、SPDという国民政党が著しく弱体化している一方で、ドイツでは緑の党が躍進しているのは既に何度も取り上げて来た。この傾向は欧州議会選挙でも同様であり、結果自体はさほど驚くべきものではなかった。

しかしCDUの党首、クランプカレンバウアーは選挙前YouTubeで受けた批判ビデオに対して著しく不適切な反応を示し、更にその状況を悪化させた。その結果、何が起こったかといえば、遂に支持率で緑の党に抜かれてしまったのである。

最新のForsaでのアンケートによると、緑の党の支持率は27%、CDU/CSUは24%である。腐ってもこれまでドイツで最大勢力を保ってきたCDU/CSUだが、その支持率は歴史的な低さまで落ち込んでいる。そして、かつて10%にも満たなかった環境政党、緑の党に抜かれるという過去にはない状況になった。これでもはや現在のドイツ政界は何が起こるか分からない益々不安定なものになった。

これに加え更にドイツの政界を揺らせているのは、欧州議会選挙の惨敗を受けてSPDの党首、アンドレア・ナーレスが辞任を表明した事だ。更にこのナーレスの後任選びは非常に難航し、現在のSPDの人材不足を露呈する形となった。

このゴタゴタによりSPDの支持率は一気に5%も低下し、12%という党史上最低の数値まで落ち込んでいる。まあ現状で党首を引き受けるのは火中の栗を拾うことは分かり切っているので、誰も引き受けたがらないのは想像できる。SPDはひとまず一時的に3名の代理党首を立てた。

しかし、ナーレスがここで辞任したことは更に大きな意味をドイツの政治にもたらす可能性がある。それはSPDが現在の連立政権から脱退し、新たな総選挙が実施されるというシナリオである。

現在SPDはCDU/CSUと共にいわゆるGroko(Große Koalition)と呼ばれる連立政権の一角であるが、2017年の総選挙直後はもともとは野党に回る意向だった。しかし、当初予定された緑の党、FDP(自由民主党)、CDU/CSUによるジャマイカ連立が、FDP党首クリスティアン・リンドナーの反乱によって頓挫したため、無理やりSPDが連立政権に組み込まれたという経緯がある。このSPD政権入りを強力に後押ししたのが、当時新たに党首となったナーレスであった。

しかし、これでSPDがどうなったかと言えば、見ての通りである。SPDは完全なCDU/CSUの犬になり、どこに存在し何をしているのか不明なくらい存在感が低下した。そのナーレスが辞任した今、SPDが今こそ現在の連立政権から脱退しようという話が出てきても全く不思議ではない。

一方で、もう一つの連立政権の一角、CDU/CSUは是が非でも現在の連立政権を死守したい。言うまでもなく、現在新たな総選挙を行えば、緑の党に敗北するのは分かり切っているからだ。そして、現実にそのような事態になれば、緑の党がCDU/CSUと新たな連立政権を組むのは簡単ではない。言うまでもなく両党の政策が乖離しているからだ。

では、新たな総選挙になった場合どうなるか。現在予測されているのが、緑の党、SPD、Linke(左翼党)の左派による連立政権である。実際にこの組み合わせは、先に行われたブレーメンでの州選挙で現実になる見込みである。ここでCDUは26,7%で最大勢力となりながら、先に挙げた左派3党が連立したことで野党に回る見通しとなった。つまり、緑の党はドイツ連邦議会においてもこのパターンで連立政権を組むことはあり得るという事だ。

故にCDUの党首であるクランプカレンバウアーは有権者に以下のように強くクギを刺した : 「迷ったらは緑の党は民衆の為の政治ではなく、左翼に決定する」更に「新たな政権を夢見て緑の党に投票したならば、左翼政党で目が覚めることになる」。

確かにそれは少々危うい気もするが、実際にはYouGovのアンケートによると国民の52%がまず再選挙を望んでおり、これは反対の27%を大きく上回った。更に可能性のある連立政権として最も支持を集めたのが、先に挙げた左派3党による連立政権である(25%)。次に2017年に頓挫したCDU/CSU、緑の党、FDPによるジャマイカ連立(15%)、3番目にCDU/CSUと緑の党の二者によるパターンとなった。

国民の多くはここ数年で広がった貧富の差や一向に進展しない環境問題の解決に向けて、リベラルな政党による政治を望んでいるのかもしれない。そしてその場合、新たな首相となるのは緑の党のロベルト・ハベックになる可能性は十分にある。言うまでもなく、ハベックは現在、失言で完全に滑ってしまったクランプカレンバウアーを上回る支持を新たな首相候補として集めている。

これらは今のところすべて憶測の域を出ていないが、CDUの有力政治家でクランプカレンバウアーと党首の座を争ったフリードリヒ・メルツは現在の連立政権は今年中に瓦解するだろうと発言しており、少なくとも今年中の再選挙はかなり現実味を帯びて来ていると言えるだろう。