ドイツ、28年ぶりの高いインフレ率を記録する

コロナ・パンデミックが発生して我々の生活はかつて無いほど感染症の危機に晒された訳だが、その一方で密かに私が恐れていたのが、パンデミック後に予想されたインフレである。

パンデミックの真っ只中だった昨年においては当然経済もどん底まで落ち込み、付加価値税を下げるなどの経済政策もあってか、物価は全体的に横ばいだったと言える。これは食料品の価格が異常に高くなって一方で、エネルギー価格が劇的に下がった事によるものだった。

しかし、今年に入ってから遂にその恐れていたインフレがやってきたと言って良いだろう。先の8月は何と物価上昇率3,9%を記録し、これは実に1993年12月に記録した4,3%に次ぐ、28年ぶりの高いインフレ率である。

そしてそんなニュースを聞くまでもなく、生活していれば明らかに全ての物品の価格が上がっている事が実感できる。特に私は家賃が物価連動型の契約をしているので、非常に喜ばしくない状況でもある。

特に上がっていると実感するのは昨年一旦劇的下がったガソリンなどの燃料であり、これは昨年の8月に比べて実に26,7%も上がった。しかし更に上がっているのは暖房用オイルであり、これは何と57,3%も上がっている。

古い住宅ではまだ暖房の燃料をオイルから賄っている事が多いが、そのような住宅に住んでいる人は特に今年の冬の暖房代は爆上がりした請求書を覚悟した方が良いかもしれない。昨年価格が上がった食料品も4,6%更に上がっている。

そのような状況故か、最近はまた組合によるストライキが各地で多発している模様である。特に2週間ほど前の機関士組合によるストライキでは多くの運行がストップし生活に多大な支障をきたした。

また、総選挙を前にしてここ数年どん底だったSPD(リベラル)が遂にCDU/CSU(保守)を逆転したが、これも現在の急激な物価上昇と関連性があると思われる。パンデミックで庶民の生活が苦しくなったところで、現在インフレが来ているという心理的な影響は大きいのではないか。

もっとも、現時点ではこのインフレはそれ程問題視されておらず、むしろ経済が正常に回復途上である故、止むを得ない状況でもある。特に昨年は景気対策で付加価値税をを一時的に下げたので、その反動として現在高いインフレ率を記録しているに過ぎない。つまり、この高いインフレ率は、少なくとも今年一杯は続く。

インフレが落ち着くのは早くとも来年になるそうだが、どうせ来年はまた来年の変な風が吹く。インフレが無くなれば今度来るのは多分増税だろう。コロナ・パンデミックのツケが簡単に済むと思わない方が良い。まだまだ負担は増えるのは確実だ。