日本の新型コロナ情勢を、非常に心配している

新型コロナウィルスの影響でドイツ全土に厳しい他人との接触制限が発令されてからおよそ3週間になるが、徐々にその効果は出始めてきた。数字を見る限り、新たな感染者の増加スピードは明らかに緩やかになっており、感染者が2倍になるのにかかった日数である”Verdoppelungszeit”も目標としていた14日を超えた。

予想していたとは言え、いきなり保育所も店も閉まり「外に出るな」と国(バイエルン)から言われたことで私自身も驚き、対応に追われたが、現状を見る限りそれで間違っていなかったと思っている。現状気になるのは、寧ろ日本のほうだ。余計なお世話かもしれないが、非常に心配している。

日本では既に緊急事態宣言も出されており、もはや外出や人との接触を避けなければならない事は皆が分かり切っているだろう。しかし、この新型コロナの影響は余りにも大きく、封じ込めのために各々個人、大小の組織ができる対策には限界があるのではないか。国が更に強く、断固とした措置で国民の生活や経済活動に介入しなければ、ウィルスは物凄いスピードで広まっていくことを懸念している。

私が、現時点でドイツの新型コロナ対策で、個人的に最も「助かった」と思える事があるとすれば、迷わず国による「休業補償」を挙げておく。これはドイツ語で”Kurzarbeitergeld”、訳せば「短時間労働金」と呼ばれている。これはコロナの影響で減らされた労働時間分の給与の60%、家族構成によっては67%の給与を国が補償するというルールであるので、広義の休業補償と言って差し支えないと思う。尚、ドイツでは仕事に行くこと自体は禁止されていない。

日本とは単純に比較できないのは承知だが、国からの休業補償は、企業を助け、国民が会社から休業を命じられても安心して自宅待機が出来るよう、日本でも実現してほしいと思っている。とりわけ、サラリーマンがこれで勤務先から解雇されるリスクは著しく低下する。

もちろん、国民一人一人の意識、他人に感染させないというマナー、そして自粛活動が大事なのは言うまでもない。それはよく言われるように日本人の強さかもしれない。私自身もバイエルンで外出制限が発動する以前からコロナを警戒しており、具合が悪くなった時にはテストを問い合わせた(断られたが)。また、経済的に極めて大きな打撃を被ったが、日本への一時帰国も早い段階で取りやめた。

しかし、”Stay Home”などと簡単に言うが、少なくとも今現在私が安心して家に閉じこもり、またそれをドイツの住民全体で実現できるのは、非常事態として国が生活を経済的にバックアップし、有無を云わせぬ強力なルールを発動しているからだ。たとえ日本であっても、このような強力な措置なしに各々の自粛だけで接触の8割を減らすのは現実的ではないと思われる。

もう一つ、個人的に非常に懸念しているのが、日本国内で対策の足並みが揃っていない点だ。緊急事態宣言を出したは良いものの、それは一部の都道府県に限られている。これでコロナ疎開が起こるのは火を見るより明らかだ。これを現在の措置でコントロール出来るのだろうか。

似たような事はドイツでも問題になった。連邦制のドイツでは州や地方自治体により対策が異なる事で、地方単位で医療崩壊が起こる可能性があるからだ。この場合、見かけの感染者数の多い都会が危なそうに見えるが、実は医療体制が弱い田舎の方が危ないとさえ思える。事実、ドイツで最も危険な場所となったのはハインスベルクと呼ばれるノルトライン・ヴェストファーレン州の人口4万2千の街だ。現在では州ごとに若干の差異はあるものの、ほぼ全土で措置は統一されている。

日本の場合、例えば島根県は長らく感染者がゼロだったが、この程一人確認されたと読んだ。聞けば3月の時点で症状が出ており、感染経路も不明らしい。検査の数など今更言うまでもないが、たった一人でもこのような状況が最も危ないのではないか。街は感染者で溢れている事が懸念され、既に緊急事態レベルだとさえ思える。詰まるところ、一部だけ締め付けを強化しても、別の場所が緩い、或いは基準は異なれば意味がないどころか、逆効果になる事を懸念している。個人的には、対策をするなら可能な限り日本全体でルールを統一するべきだと思っている。

現状、日本は各々が自粛活動によってウィルスの拡散を抑える以外に方法はない。何とか多くの個人、組織がこれを実践し、生き延びてほしい。しかし、新型コロナから国民を守れるのは、強い国の力、シンプルで強硬な措置、そしてそれを行使できる強いリーダーだけだとも思っている。