昨日はチャンピオンズリーグの決勝戦が行われ、ユルゲン・クロップ率いるリバプールがトッテナムを2-0で下し、2018/2019年シーズン欧州クラブチームの頂点に立った。試合自体はイングランド勢同士ではあるが、やはり現代ドイツ最高の監督でもあるユルゲン・クロップが悲願のチャンピオンズリーグのタイトルを勝ち取る事が出来るかはドイツで大いに注目された。
クロップはこれまで2度チャンピオンズリーグの決勝に進出しているが、何れも敗れている。更に単に決勝戦と言うことになると6連敗中だ。しかし、今回は相手が同リーグでやや力の劣ると見られていたトッテナムと言うこともあり、チャンスは非常に大きいと見られていた。チャンピオンズリーグで決勝に進出するチャンスはそう何度も来ない。クロップにとっても、監督生活で最も重要な一戦となった事は間違いない。
そして肝心の試合であるが、イングランドのチームらしく長いボールと肉弾戦を主体とした大味な試合展開となった。両チームとも非常にナーバスなのかリスクを犯さず、ダイナミックさにも欠ける試合で、一言で言えば退屈だったと言える。
その中でリバプールは開始早々に獲得したPKを決め、その後はソリッドな守備でトッテナムに殆ど決定的なチャンスを許さず、逆に終了間際にセットプレーから追加点を奪い勝利した。決して派手さはなかったが、ミスを犯さずキッチリと試合をコントロールし、最終的に勝利した事はドイツ時代には見られなかったクロップの進化であると言えよう。
試合中のクロップは努めて冷静で、興奮を抑えているようにも見えた。試合後のインタビューでも喜びというよりも、寧ろ安堵の表情を見せている。過去に敗れた2回の決勝戦は挑戦者の立場だったが、今回は戦前から有利と見られていただけに、プレッシャーも大きかった筈だ。クロップはインタビューで以下のように答えている。
正直言って、私個人にとってはこの優勝はそんなに重要ではないが、私の家族にとっては重要だ。ここ数年はいつも銀メダルを持ってバカンスに行かなければならなかった。それはもちろん、そんなに素晴らしい事ではない。今年はやっとの事で金メダルを持っていける。これは本当に(これまでとは)全く異なる事だ。我々はみな人間だ。敗れた時に悔しい思いをするのはいつも私よりも家族だ。今日私の妻に金メダルを贈れることを本当に嬉しく思う
本当にクロップの人柄が滲み出ているコメントだと言えるだろう。この正直さ、親しみやすさ、そして自分以外の人間のために最大限の力を尽くせる人間性こそが、クロップを名監督とし、そして多くの人々を惹きつける所以だろう。
クロップはこれでハインケス、ヒッツフェルト、ラテック、クラマーに続く、チャンピオンズリーグを制した5人目のドイツ人監督となった。リバプールとの契約は2023年まで残っている。ひとまずは今年僅差で2位となったプレミアリーグの制覇が次なる目標になるだろう。そして、その後は代表チームの監督として、ドイツをW杯、EUROで優勝に導く事を多くの国民が望んでいる筈だ。