ドイツ史上最高額でチェルシーに移籍した、カイ・ハーヴァーツについて

おそらく、現在のドイツサッカーで最も将来有望な若手選手として持ち上げられているのが、カイ・ハーヴァーツである。現在21歳のハーヴァーツ昨シーズンまでバイヤー・レヴァークーゼンに所属し、今シーズンドイツ史上最高額である8000万ユーロの移籍金でプレミアリーグのチェルシーに移籍した。

それまでの最高額は私が知る限りシャルケ04からマンチェスター・シティへ移籍したレロイ・サネであり、当時の金額は5200万ユーロだった。つまりハーヴァーツの移籍金はこれを遥かに凌ぐダントツの金額と言える。ハーヴァーツがどれほど高く評価されているか、これが示しているだろう。

私はハーヴァーツのプレーを何度か主にドイツ代表の試合で観たことがあるが、そのプレースタイルはまさに王道の10番タイプだと言える。左利きであり、その柔らかいボールタッチ、広い視野から繰り出されるスルーパス、その仕草や蹴るフォームと言い、メスト・エジルを彷彿とさせる。事実ハーヴァーツもインタビューでエジルを意識している旨の発言を残している。当然ながらピッチの中央、トップ下で最も活きる選手である。

しかし、このハーヴァーツが非常に高く評価されているのは、その高いテクニックからだけではない。あくまでもその選手としての総合力の高さ、ポテンシャルの高さである。これについては元ドイツ代表監督で、現在レヴァークーゼンのスポーツディレクターであるルディ・フェラーのコメントを引用させてもらう。

“Er ist schnell, ausdauernd, kopfballstark, robust, technisch perfekt, sein Spielverständnis ist überragend, und er denkt auch noch defensiv. Er macht Dinge mit einer Leichtigkeit, die bei anderen nach harter Arbeit aussehen”ハーヴァーツは速く、スタミナがあり、ヘディングが強く、屈強で、技術的には完璧だ、理解力が素晴らしく、更に守備の事も考えている。他の選手にとって難しく見える事も、ハーヴァーツはいとも簡単に行うのだ。

更にフェラーに言わせればハーヴァーツはメスト・エジルミヒャエル・バラックをミックスしたタイプの選手であり、今後10年ドイツの中心選手になると断言している。確かにエジルのテクニックは世界最高峰であり、それにバラックのヘディングの強さ、得点力、守備力などの選手としての総合パッケージが加われば鬼に金棒である。とんでもない褒めちぎりようだ。

もっとも、私から言わせればこれは少々褒めすぎであり、ハーヴァーツが金額でレロイ・サネを大きく凌ぐほどの圧倒的な才能を持ち合わせているかは少々疑問が残る。レヴァークーゼンの幹部であるフェラーにとってハーヴァーツは自チームの選手だ。日本では身内を褒めるのはあまり心象が良くないかもしれないが、ドイツでは逆で、自チームの選手は大抵、褒めすぎぐらいに持ち上げる。

また、私が最近のドイツの若手選手で最も衝撃を受けたのは、おそらくレロイ・サネかレオン・ゴレツカあたりだろう。もう一つ前の世代ならメスト・エジル、マヌエル・ノイアーあたりだ。これらの選手に関しては、ともかく度肝を抜かれた。そのプレーは常人離れしたところがあった。

これ迄のところ、ハーヴァーツに関してはそのような衝撃は受けていない。ハーヴァーツは巧いが、エジルほど巧くはないし、大きいが、バラック程ヘディングが強く、肉体的に強い訳でもない。21歳の若さで、ドイツ最高額でプレミアリーグに移籍したのはそれなりに勇気いる選択だろう。プレミアはブンデスリーガよりも激しく、スピードと屈強な身体を要求されると言われる。

そもそも、若い時に天才だと持て囃されて大成した選手は稀だ。ダイスラーは27歳で引退し、100年にひとりの逸材と言われたゲッツェも大成する事なく萎みつつある。期待に違わず成長したのはトニ・クロースくらいだろう。ただそのクロースを私は当初はそこまで評価していなかったので、私の目が節穴なだけかもしれない。

いずれにしても、ハーヴァーツは現段階であまり過大な期待を掛ける事なく、長い目で見る必要がある。まずはプレミアの水に慣れて、出場機会を確保する事が先決だ。プレースタイルから言っても、十分な知力を武器にして20代の中盤以降で大成して欲しい選手だと思っている。