シュパーンを味方に付けたラシェット、CDU党首選で優位に立つ

既に辞任を表明したCDU党首であるアンネグレート・クランプカレンバウアーの後任を巡る争いの火蓋が切って落とされている。この中で事実上チャンスがあるのは元ブラックロック監査役の右派フリードリヒ・メルツか、現ノルトライン・ヴェストファーレン州の首相であるアーミン・ラシェットのどちらかだ。

経済のエキスパートでもあり、反メルケル路線でもあるメルツは早い段階で圧倒的な支持を集めていたが、ドイツ最大州の首相であり、異なる政治勢力を纏め上げる手腕に長けたラシェットもここに来て有力候補として持ち上げられてきた。

この両者は先週の初め、ほぼ同時に満を持して立候補の表明を行なっているが、ここで皆をあっと言わせる驚きの一手を繰り出してきたのがラシェットだ。ラシェットは現在健康相であり、未来の首相有力候補とも言われる若手実力者、イェンス・シュパーンと共に現れ、タッグでこの党首選に臨む表明をした。

すなわち、ラシェットが党首に当選した暁には、シュパーンがナンバー2、副党首してラシェットを支えると言う按配だ。シュパーンといえば、2年前に行われた党首選に出馬しており、ここではシュパーンは完全なノーチャンスと見られていたが、予想外の16%の票を獲得し今後に繋がる大健闘を見せている。

そして、今回の党首選ではシュパーンは今回自らが党首にならずとも、まずはラシェットの下でナンバー2の地位を獲得してステップアップしようと言う戦略に出た。仮にもしラシェットが党首となり、何かの事情で党首の地位を全う出来ないような状況になれば、次の第一候補はシュパーンとなる。そうでなくともシュパーンはまだ39歳、まだまだ未来はある。将来のCDU党首、ゆくゆくは首相の地位を見据えた非常にクレバーな決断をしたと言える。

また、これはラシェットにとっても強力な援軍になる。CDUの中でもややリベラルから中道路線を行くラシェットであるが、一方のシュパーンは一般にメルツ同様右派とされており、本来なら党内では敵対勢力だ。

つまり、ラシェットは今回この敵対勢力を味方に付けることに成功した事になる。シュパーンは前回の党首選で16%の支持を得ており、ここまで健康相としての仕事も概ね評価されている。つまり、このシュパーンを味方につけたアドバンテージはかなり大きい。もともと、この党首選はメルツが優位だと見られていたが、この強烈な先制パンチで形勢は逆転した感がある。

このラシェットが一見すると相入れないシュパーンとチームを組んで出馬を表明したのは、ラシェットそれまでの控えめな態度も相まってか、非常にインパクトがあった。そして出馬と同時に党派を超えたチームでの解決という、いわば現在分断されているCDUに最も必要とされる指針を示したその手腕は見事と言う他ない。そして、党首となったラシェットが最終的にメルケルの後を継ぐドイツ首相になる確率は、確実に高まっていると言えるだろう。

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