レロイ・サネ、ハンガリー戦の酷い出来で痛烈な非難を浴びる

先日ドイツは絶望的な内容ながらハンガリーと辛くも引き分け、悪夢のグループリーグ敗退を回避した。そして、この苦戦の要因として痛烈な批判を浴びているのが、この日全く実力を発揮できなかったレロイ・サネである。私はそもそもサネをスタメンで起用する事自体が驚きであり、これは監督であるヨアヒム・レーヴの重大な采配ミスだと思うのだが、確かにこの試合のサネは全くの期待外れだった。

最も象徴的な場面が試合終盤の決定的なミスだ。実はこの試合、ドイツは試合終了間際に勝ち越しゴールを上げる決定的なチャンスがあった。右サイド高い位置でフリーで抜け出したサネは中央で待つどフリーのフォランドかヴェルナーにボールを転がせばほぼ間違いなく得点なっていた筈だ。もしここで得点していれば、ドイツはグループリーグ1位での突破だった。

ところが、サネのキックは何やら誰も存在しない不可解な方向へ飛んでいき、これには監督のレーヴもブチ切れの様子がテレビに映し出された。この他にもサネは肝心な場面で全く期待通りの仕事が出来ず、試合後もメディアから痛烈な非難に晒されている。残念ながら、高い給料をもらっているプロである以上、それも止むを得ない。

あくまで私の目からみれば、ドイツ代表の中でサネのアスリートとしての才能は突出している。あのチーターみたいなスピードで繰り出されるドリブル、急角度の切り返し、更にはその左足のキック。過去ドイツ代表において、これ程までに単独で相手に脅威を与えられる選手は存在しなかった。

しかし問題はまず、サネの守備力、ひいては守備意識が著しく低い点にある。EURO直前のデンマーク戦でもキミッヒがプレスに行かないサネに大声で怒鳴っており話題になった。

もっとも、ハンガリー戦に関しては私が見る限り、サネの「守備意識」はそこそこあった。おそらく散々チーム内で言われたのだろう。だがあくまでも「守備力」が低い事には変わりはなく、ドイツの2失点目は最後競り合ったサネの守備力の低さに目を瞑る訳には行かない。

また、サネのドリブルはスペースがあればこれ以上ない脅威になるが、味方との連動性が著しく低い為、引いた相手に対しては逆に攻撃を停滞させる、あるいはボールロストからカウンターを浴びる危険を増加させる。この点が既に世界最強のアタッカーであるフランス代表ムバッペとの大きな違いだろう。ムバッペは鬼のように速いだけでなく、味方に使い、使われるの巧いから脅威なのだ。サネにはそれがない。

2016年、サネは20歳にしてドイツで最も高額な選手としてペップ・グアルディオラが率いるマンチェスター・シティに移籍したが、結局完全に定位置を掴む事は出来なかった。2018年はW杯のメンバーから外れ、昨年からはFCバイエルンでプレーしているが、ここでも完全に定位置を掴んでいるとは言い難い。更に今年は途中出場で途中交代させられると言う屈辱的な起用もされている。

サネは誰の目から見ても分かるキラ星のような才能を備えている一方、監督からすれば極めて使いにくい選手である事は間違いない。得に中盤を支配するポゼッションサッカーとサネのスタイルは極めて相性が悪い。もっと自由奔放なサッカーなら、サネの才能は活かされるかもしれないが、ここまではその才能を活かせる場にも恵まれていない。この点は不運とも言える。

しかし、いずれにせよ先のハンガリー戦でサネは今大会見切りを付けられたと思われ、今後起用される事はないだろう。まだ25歳ゆえ未来はある。しかし、新監督のハンジ・フリックがサネを代表に呼ぶだろうか。現状私はそうは思わない。サネを待ち受ける未来はなかなか厳しいのではないかと思っている。