バイエルンの名所、ロイタシュ・ガイスタークラム

2年ほど前にへレンタルクラムと言う渓谷を訪れて以来、私はすっかりバイエルンとオーストリアとの国境地帯にある渓谷の虜になってしまった。クラムとはバイエルン語で渓谷の意味である。昨年は日本でも徐々に有名になりつつあるパルトナッハクラムを訪れた。これはへレンタルクラムの壮大さには及ばなかったが、極めてコスパに優れた観光地であるのでバイエルンに旅行に来たなら是非一度訪れる事をお勧めする。

それはさておき、今回はオーストリアとの国境をまたいで聳えるカーヴェンデル山地、ロイタシュ・ガイスタークラムを訪れた。ここは話に聞けば小さな子供でも安全な渓谷だとの事だ。この渓谷はドイツ、ミッテンヴァルト側の入口とオーストリア、ロイタシュ側からの入口がある。

私は北から来るので本来ならミッテンヴァルト側から入りたかったのだが、あいにく駐車場がなかったのでロイタシュ側から入った。ロイタシュには整備された駐車場があり、終日5ユーロで車を停められる。渓谷への入場料は無料と気前が良い。駐車場からおよそ10分ほど歩けば渓谷の入口だ。

そして、いよいよ渓谷の中に入ると、いきなり断崖絶壁の岩山に設置された桟道を進む事になる。この桟道は2006年に建設されたもので比較的新しい。なるほど、頑丈な鉄格子で作られており、これで子供連れでも安全と言う訳である。実際に幼稚園の遠足らしきグループなど、多くの子供連れを見かけた。

もっとも桟道は鉄格子、つまり足元を見ればまさに断崖絶壁の底が見えるので結構なスリルがある。子供は逆に怖くないのかもしれないが、こんな断崖絶壁に大勢の子供で来るのはまず日本では考えられないだろう。ともかく、桟道の遥か下の谷底では激流が音を立てており、前方を見渡せば壮大な山々が聳え立っている。

そして、この桟道をひたすら進めばパノラマ橋と呼ばれる絶景ポイントが存在する。これは吊り橋のように見えるが、こちらも鉄格子で頑丈に建設してあるのか殆ど揺れる事は無かった。

そしてこのパノラマ橋を渡ると鉄格子の桟道から普通の山道に入る。私は北方向へ進路を取り、ミッテンヴァルト方面へ向かった。先に壮大な滝が有るとの事だったので、それが観たかったからだ。途中レストランがあったので、そこでビールを飲んで小休憩する。そこから暫く歩くとミッテンヴァルト側の入口に到着した。

このミッテンヴァルト側の入口にあるキオスクから例の滝へ向かう事ができる。滝への道は別になっており、キオスクで一人3ユーロの入場料を払えば入る事ができる。この滝へ通じる道は既に1880年代には開設されており、古くから現地で親しまれていた観光ポイントでもある。急流にそった木製の歩道をおよそ200メートル進んでいけば、高さ23メートルの滝に辿りつける。この滝を観光したのち、来た道を再び通りロイタシュの駐車場に帰った。

ロイタシュ・ガイスタークラムは南のロイタシュ入口から北のミッテンヴァルト入口までおよそ1,6キロであり、この地方の渓谷ではもっとも距離が長い。ロイタシュ方面の鉄格子の桟道は幾つかの階段があるのみで、道も平坦である。もっとも、先に述べたように下を覗けばかなりのスリルがあるので、高いところが苦手な人にはお勧めしない。

一方のミッテンヴァルト方面から入るならば直ぐに壮大な滝を見に行く事ができる。しかし、こちらからロイタシュ側に向かう道はやや傾斜が急な山道となるので、やや脚力を要する。靴も丈夫なものが必要だ。全体的に景色はパルトナッハクラムよりは良かったが、やはりへレンタルクラムの壮大さには及ばないというのが私の印象だ。