10月以降急激に増え始めた新型コロナ感染者を減少させるべく、ドイツでは11月一杯はいわゆる準ロックダウン措置が施行されている。平たく言えば、学校、保育所は開けたままで、レストラン、レジャー、文化施設などの人が集まる所を閉鎖した。しかし、結論から言えばこの効果は期待した程の効果は得られなかった。
確かに新規感染者の急激な伸びは無くなったのは事実なのだが、依然として新規感染者数は1日あたり平均2万人弱と高止まりしている。これだけ毎日新規感染者数が増える状況が続けば、当然重症者数も増え、集中治療室のベッドもどんどん埋まる。
ドイツでは既に最悪の事態も想定してトリアージの際の判断基準も公開されている。大まかに言えば、出来るだけ多くの人命を救うという基準で重症者の治療の優先度が判断される。因みに春先に医療崩壊したイタリアでは、救える人命の数ではなく、救える命の長さを優先したそうだ。つまり、若い人ほど優先的に治療されたと言う事になる。
これは極めて難しいテーマなので、日本では「不謹慎」になるかもしれないが、いずれにしてもそのような状況を現実的に、真剣に考えなければならないと言う事である。
話が横道に逸れたが本題に入る。要するに11月の準ロックダウンの効果で期待された効果が得られなかった以上、12月もこの措置を延長するというのがドイツでは既に既定路線となっており、昨日それを首相のメルケルが記者会見で発表した。正確に言えば、この準ロックダウン措置は更に厳しくなり、ひとまず12月20日まで継続される。
厳しくなった主な点を挙げる。まず会合で会える人数は最大2世帯10人から2世帯5人までに減少した。店舗への入店は10平方メートル内に1人まで、800平方メートル以上の大きな店なら20平方メートル内に1人まで制限される。更に店に入る前の段階、駐車場でも既にマスクをしなければならない。
そして今回最大の焦点となっていたのが、クリスマス、大晦日をどうするのかと言う点である。特にクリスマスはドイツ人にとって家族が集う1年で最も重要な祝日であり、これがコロナ禍で潰れるのは避けたい。今年は既にイースターの祝日もこれで完全に潰れている。
そこでドイツ政府と州はこのクリスマスと大晦日を救うべく、例外的に12月23日から年明けまでは家族と親戚で最大10人まで集まる事を認めている。その際、14歳以下の子供は数に含めなくても構わないので、おそらく大半の親しい家族は集合する事が可能になる。これ程までに家族が有難いと思えるクリスマスは今までなかっただろう。
大晦日に関して最も焦点となったのは恒例の年明け花火をどうするかと言う点なのだが、これは基本的に「自粛」するように勧告されている。但し、人々が多く集まる広場や通りに関しては完全に禁止され、該当の場所は役所が指定する。私は大晦日の花火を家のベランダから見物するのが毎年恒例だが、今年は無いと思った方が良さそうだ。
もっとも、これらのルールも例によって州ごとに微妙な違いがでる可能性があるので注意する必要がある。と言うのも新型コロナの蔓延状況も地域によってかなりの隔たりが出てきているからだ。例えば、ドイツ最北の州シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州などは非常に数値が低いので独自のルールを策定する可能性がある。今回はクリスマスや大晦日の対応を巡っても会議は紛糾した模様で、発表までかなり時間がかかった。
ただいずれにしても、決定されたクリスマスと大晦日の例外的措置により、ここで感染が再び拡大する事は間違いないので、来年の1月も現在の準ロックダウン措置が継続される可能性は十分にある。次回は12月15日に再び今後の措置について議論されるようだが、急に感染が減る事は考えにくい。
日本の状況に関しても個人的には気になっているが、おそらくこれから寒くなるにつれて感染が拡大するのは間違いないと思われる。事実、ドイツ同様寒冷な気候と言われる北海道が現段階で最も蔓延しているのを見ても、寒冷かつ乾燥した地域で新型コロナは活発になる事は明らかである。
また、日本では世界でも例外的に夏場に新型コロナが蔓延したが、もしかしたらこれは密閉した部屋でエアコンがウィルス入りの空気を循環させていたからではないかと勝手に思っている。ドイツではこれが原因でテニエスの肉工場で1500人のクラスターが発生した。まあ、素人なので適当な事を言うと叩かれるかもしれないが、頻繁な換気は結構重要なポイントだと個人的には思っている。