ヨアヒム・レーヴ、EURO2021を最後にドイツ代表監督を辞任する

既に日本でもニュースになっている通り、ドイツ代表監督であるヨアヒム・レーヴが今年のEURO2021を最後に辞任する事を表明し、既にDFBからもこれは公式に発表された。

ヨアヒム・レーヴは2004年にドイツ代表のアシスタントコーチに就任し、2006年より監督を務めている。代表チームの監督は普通ある程度の長期的なプランでチームを任せられるため、その就任期間は長くなる傾向があるにせよ、16年という長期政権は近年では異例と言える。その間レーヴは2008年EURO2位、2010年W杯3位、2012年EURO4強、2014年W杯優勝、2016年EURO4強と言う輝かしい戦績を残した。

一方で、2018年W杯で史上初のグループリーグ敗退の屈辱を味わった監督して名を残す事にもなった。これ以降チームの立て直しも上手くいっておらず、昨年はネーションズリーグでスペインに0-6という歴史的な敗戦を喫した事で、辞任を求める声は非常に大きかった。その戦術、マネジメントにも限界が見え始めてきたのも事実である。このレーヴの16年間の仕事については、EURO終了後に折を見て総括したい。

ひとまず重要なのは、この辞任の決断をどのように評価するかであろう。そして、私に言わせればこれはヨアヒム・レーヴの英断であり、EUROに望むドイツ代表にとっても、国内のファンにとっても朗報だと思っている。何より自ら辞任をする事で、世間の代表チームに対する風当たりは劇的に減少する。

寧ろこれでレーヴのこれまでの仕事が再評価される動きが出てくる事は間違いない。強いけど退屈と揶揄されたドイツサッカーのスタイルを華麗な攻撃サッカーに変貌させた功績は大きく、更に24年ぶりの4度目のW杯制覇という偉業は評価されて然るべきだ。16年も同じ仕事をしていれば、良い時も悪い時もある。評価するのはあくまでトータルでの成果である。

今回の辞任をレーヴが既に決定していたか、最近になって最終的に決めたかは本人のみぞ知るところだろうが、レーヴはこのタイミングを計って公にした事は間違いない。このタイミングも個人的には非常に良かったと思っている。

というのも折しもドイツ代表は今月末に来年のW杯予選を控えており、最近のマンネリ化の傾向から言えば、例によってのグダグダの退屈な試合になるのが予想され、今年のEUROもどうせ期待薄と言う雰囲気が充満していた。しかし、今回の発表でEUROに臨む今年最初の試合でモヤモヤが晴れたような明るい雰囲気が出て来るのではないか。自らの辞任を世間が求めている事は、レーヴ自身が痛いほど感じていただろう。

並行して気になるのは当然、誰がレーヴの後任になるかという点であるが、国民の一番人気は言うまでもなく、現リバプール監督のユルゲン・クロップだ。しかし、クロップはリバプールとの契約が残されている事を理由にはっきりとドイツ代表監督就任の可能性を否定した。まあ契約が残っている以上、誠実な人間の常識的な答えである。

現時点でおそらく最も可能性が高いと思われるのが、ドイツで戦術家とし名高いラルフ・ラングニックである。ラングニックはドイツで監督としての実績も十分な上に現在はフリーである事が大きな理由だ。ただし、このレーヴの後任は自国開催のEURO2024で監督を努めることも濃厚で、ここでの優勝は国家的プロジェクトになる。プレッシャーはかなり大きくなる事は間違いない。