ドイツのルフトハンザ・グループは多数の航空会社を傘下に収め、売上高で言えば世界トップクラスの超巨大航空会社である。更にここ数年でドイツ国内に関してはほぼシェアの独占状態を確立した。2017年にドイツ国内2位のシェアを誇っていたエア・ベルリンが消滅し、昨年は4位のゲルマニアが消滅した。3位は私が知る限りイージー・ジェットであるが、そのシェアは確か8%程度である。
つまり、我々利用者にとって国内便はほぼルフトハンザ以外に選択肢は無い。格安航空会社を使いたければ田舎の僻地の空港を使わされるし、ドイツ鉄道など遅延欠便の連発である。こんな状況なので価格設定などは殆どやりたい放題だろう。売上高は年々右肩上がりで、儲かってしょうがないと言えるほど我が世の春を謳歌していた事は想像に難くない。
しかし、そのルフトハンザもさすがに今回のコロナ禍で倒産の危機に瀕する程の深刻な状況に陥った。n-TVによると利用客数は前年の同時期に比べて99%の減少し、その中で人件費やら場所代などの固定費は当然払い続けなければならない。
航空業界など華やかに見えるが、高額なサービスや機材などを扱い利益率などそもそも低いと読んだ事がある。更に上下幅の大きい燃料価格の変動や、地政学上の出来事に左右される不安定なビジネスだろう。社長のシュポーアによると現在は1時間に100万ユーロの損失が出ている状況との事だ。つまり国の助けなしにはルフトハンザでさえも存続不可能だと言うことである。
そう言う訳でつい最近、ドイツ政府による総額約900億ユーロの救済パッケージがルフトハンザと合意された。一企業に対してこれだけの金が国から出ると言うのはおそらく前例が無いが、ルフトハンザは世界に13万8千人の従業員を抱えていると言われているだけでなく、輸出大国ドイツのシンボルと言っても良い存在である。
売上高で世界トップのアメリカン航空やデルタ航空と肩を並べる程にルフトハンザを巨大化させたのは、ドイツの国策でもあるだろう。大企業が必ずしも優れていると私は思っていないが、やはり規模の大きさは何かと大きな意味を持つ事を再確認させられる。ルフトハンザの復活の為に巨大な支援パッケージが必要な事に議論の余地はない。
もっとも、EUがこの救済パッケージ承認するために、ルフトハンザはフランクフルトとミュンヘンの合計8機体と24の発着枠を手放す事になる模様だ。これはこの救済策により考えられるルフトハンザの更なる独占状態を防ぐ事が目的である。この機体及び発着枠は一年半以内に欧州の新たな競合航空会社、それも今回のコロナ禍で概ね国からの資本介入なしに切り抜ける事に成功した航空会社に与えられるとされる。
そんな航空会社が存在するのなら本当に大したものだと思うのだが、実際には国からの支援なしにはおよそ世界のおよそ半分の航空会社が6月には破綻すると言われていた。これから徐々に飛行機も再び飛ぶようになるとは言え、実際には第二波の到来も懸念されており今後空の便がコロナ前と同じ状況になるには相当な時間がかかると思われる。
また、今後は地球温暖化の観点から言っても、飛行機の利用は推進されない。既にドイツは鉄道の付加価値税を19%から7%に下げ、逆に飛行機の利用に新たに税金を課しており、格安航空会社も鉄道にそのシェアを奪われる事は間違いない。更に今後は飛行機で出張をする代わりにオンラインでの会議やアポが増える事は間違い無く、ビジネスでの需要も減る可能性が高い。今回大規模な支援を受けるルフトハンザも、立て直しには非常に厳しい未来が待ち受けていると思われる。