ドイツで広がりつつある、マスク装着義務化の議論

今回の新型コロナ危機で各国の対策、対応の違いが浮き彫りになっているが、大きな違いの一つにマスク装着の是非がある。知っての通り、マスクの装着が日常化している日本や他のアジア諸国とは異なり、欧米、勿論ドイツでも外出時に基本的にマスクは装着しない。これにはもちろん理由がある。

まず、一般的なマスクは感染拡大を防ぐ方法としてそれ程効果的ではないと説明されている。メディアに登場する専門家の話では、マスクの装着は既に感染している人間が他人に移す事を防ぐ効果はあるが、装着により自分への感染を防ぐという効果は殆ど無いとされ、これに関してはほぼ異論は無い。故に感染者のみがマスクを装着し、健康な人が稀に咳やくしゃみをするときは、腕を曲げて飛散を防ぐのが一般的である。

もう一つ、ドイツでは基本的に外に出れば顔を見せるというのが常識であり、マスクを装着するという事に抵抗を感じる人が多いのもあるだろう。以前ドイツの内務相だったデメジエールはドイツ的な行動、価値観の一つに、「ドイツの社会は開かれた社会であり、顔を見せる」事だとした。もちろんドイツ人はそんな事は意識していないだろうが、社会に深く根付いている習慣はそうそう変えられるものではない。

しかし、ここまでの情報を見る限り、アジア諸国は欧米に比べて新型コロナの影響は小さく、この原因の一つにマスクの可能性はある。少なくともしないよりは、した方が良い。隣国のオーストリアは既にスーパーマーケットでのマスク装着を義務付けた。

そしてドイツでもこの程、旧東ドイツの都市イェーナがドイツで先駆け外出時のマスク装着の義務を公式に導入した。マスクが無ければ、自分で縫う、或いは代わりの物を使用する必要がある。イェーナのルールによると、マスクでなくとも、口を覆うものであれば何でも良い。最近はドイツ政府の監督下にあるロベルト・コッホ研究所も、症状が出ていない人へのマスク装着も勧め始めており、マスクに対する態度を軟化させている。こうして、ドイツでも一般にマスクを装着すべきという雰囲気が明らかに出てきた。

これに対して、ドイツ連邦の健康相であるシュパーン、バイエルン首相ゼーダー、ノルトライン・ヴェストファーレン州首相ラシェットなどの大物政治家は現時点でのマスク装着義務に反対している。病院などの医療現場用の高品質なマスクの生産および供給が最優先であるべきとの理由だ。

先に挙げたロベルト・コッホ研究所も同様の見解を出しているのに加えて、手洗い、隔離と言ったより重要な対策を蔑ろにしないようにと、強く念を押している。マスクの装着によって誤った安心感が生まれる事が懸念されるからだ。

おそらく、現段階でマスク装着の義務化がドイツ全土に広まる事はないだろうが、これまでの生活における常識が見直され、議論されて来ているのは確かだ。もちろん、あくまで最終的に対策を決定するのは「医学」ではなく、「政治」なので、各国それぞれ事情があり対応が異なるのは当然だ。しかし、他国の事例を参考にし、必要であれば取り入れて欲しい。もちろん、納得のいく説明も含めてだ。

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