昨日は注目のテストマッチ、オランダ戦がアムステルダムで行われた。監督がハンジ・フリックになって以降ドイツは8連勝だが、いずれも力が劣る相手である。オランダは新生ドイツが初めて対戦する強豪国であり、まさに実力テストの位置付けとなる。
ドイツはキミッヒ、ゴレツカ、ズューレ、ロイス、ニャブリといった主力を欠くものの現時点のベストメンバーを投入した。オランダはよく把握していないが、ドイツにこれまで煮え湯を飲ませてきたファンダイク、デパイ、デヨンクなどのスター選手が並ぶ。そして監督はあの策士、ルイ・ファンハールである。
試合は中盤でボールキープしショートパスを繋ぎながらチャンスを伺うドイツに対し、オランダは守備から入り、長いパス、大きな展開、縦に速い攻撃で仕掛けてくる。しかし、全体的にみれば、ボール支配で上回るドイツがややチャンスの質で上回っている感がある。
前半ロスタイム、ドイツは左サイド、シュロッターベックからラウム、ヴェルナー、ムジアラ、ハーヴァーツと繋ぎ、最後はこぼれ球をミュラーがゴール正面から左足で狙い澄ましたシュートで先制する。見事な攻撃だ。
後半も開始早々、ドイツはラウムがゴール前フリーで追加点のチャンスを得るが、上に外してしまう。その後も引き続きドイツは試合をコントロールし、余裕さえ見える。しかし68分、オランダはデヨンクが絶妙な浮き球を右サイドタッチライン際へ送り、この折り返しをベルフワインが豪快に叩き込み、同点に追いつかれた。
すると俄然勢いづいたオランダは一気に攻勢をかけてドイツのゴール前に迫り、もはや逆転は時間の問題という状況になってきた。ドイツは失点と同時に2名の選手を交代したのもあり、完全にパニックに陥っている。71分にケーラーがデパイをPA内で倒し、PKは決定的と思われた。しかし、これは幸運にもビデオ判定で取り消された。
終盤になるとややペースを落としたオランダに対し、ドイツもあわや勝ち越しかと言う場面もあったが、結局試合は1-1の引き分けで終了した。
テストマッチながら強豪国同士の非常に見応えのある真剣勝負だった。71分のオランダのPKが取り消されたのはドイツにとって大きな幸運だったとは言え、失点の時間帯までドイツは試合をイメージ通りにコントロール出来たのではないか。
オランダ攻勢の時間帯で余りにも押し込まれ過ぎた点は大きな反省材料である事には変わりはないが、フリックは70分以降はテスト目的で多くの選手を交代させており、過度に問題視する必要はない。チームはフリックが監督になって以降、明らかに正しい方向へ前進している。
この試合でもっとも輝いたのは文句なしでボランチで先発した19歳ムジアラだろう。何せ、キープ力が半端ない。更に視野も広いから殆ど有り得ない状況を打開して、味方にボールを散らす事ができる。更に驚いたのは、ムジアラは全力で守備をする。過去の名選手で言うならばフランスのジダン、日本人で言うならば、走って守備のできる小野伸二のような印象を持った。この試合でムジアラは一躍W杯本戦ドイツのスタメン候補に躍り出たと言っても過言ではない。
もう一人名前を上げるとすれば、イスラエル戦に続いて抜擢されたセンターバック、シュロッターベックである。今回はオランダという強豪が相手ながら、非常に落ち着いて相手の攻撃をストップし、特にビルドアップでは絶大な安定感を見せた。ここは人材難のポジションだけに、おそらくシュロッターベックは本戦ではスタメンに入る。強豪国相手にも通用した事は、大きな収穫である。
現状課題が残るのは、やはりフォワードと両サイドバックか。フォワードに関しては2列目に得点力の高い選手が台頭しているのでカバーできるが、両サイドバックは今後もテストが必要だろう。