ドイツ、スイス相手に不満の残る内容で引き分ける

ネーションズリーグ第2節、ドイツはアウェイでスイスと対戦した。スイスは通算でドイツと最も多く試合をした国であり、通算成績は36勝9敗6分である。当然ながら勝利を計算すべき相手だ。前節のスペイン戦からメンバー変更も予想されたが、GKがトラップからレノ、DFのチャンに代えてギンターを先発させた以外は変更は無い。システムも同様の3-4-3を採用した。

スイスはドルトムントのアカンジ、ボルシアMGのゾマーなど6名の選手が現在ブンデスリーガでプレーしており、加えてキャプテンのグラニト・ジャカもかつてボルシアMGでプレーしていた。同じドイツ語圏同士、お互い知り尽くしていると言えよう。

試合はまずドイツが高い位置からのプレッシングからボールをキープしリズムを作る。クロースを起点にサネが得意のドリブルで仕掛けてスイスの守備陣を脅かした。このサネがボールを持つだけで相手守備陣は警戒してズルズルと後退する。ドイツでこれほど単独で相手に脅威を与えられる選手はこれまで存在しなかった。

ドイツは早くも14分に右サイドを攻め、ギュンドアンがギンターの折り返しを狙いすました低いミドルシュートで先制する。幸先の良いスタートとなった。

しかし20分を過ぎたあたりからドイツの中盤のプレスが緩くなりスイスが反撃に転じる。ドイツは26分、28分と守備陣が立て続けに裏を取られピンチを迎えるが、相手の雑なフィニッシュに助けられた。一方のドイツも32分に左サイド、ヴェルナーのパスからドラクスラーが正面から決定的なシュートを放つが、これはGKの正面だった。これは決めて欲しい。

その後は一進一退の攻防となるが、両チーム得点ならず。試合はそのまま1-0でドイツがリードして後半に入った。

ドイツは後半にサネに代えてブラントを投入する。ブラントはサネほど単独で相手に脅威にならないが、味方とのコンビでスイスを翻弄する。後半最初の10分はドイツは比較的高い位置でボールをキープしており、試合を上手くコントロールしている。しかし、58分に事態は暗転する。

ブラントの軽率なパスミスをさらったスイスはドイツの右サイドを攻め、最後は逆サイド後方から上がってきたヴィドマーが、ドイツ左サイドバックのゴーセンスを振り切ってシュートし同点に追いつく。これでスイスは完全に息を吹き返した。

是が非でも勝利したいドイツだが、選手はかなり消耗している様子が窺え、なかなか前方へボールを運べない。試合終了が近づくにつれてスイスがドイツのゴールに迫る機会が増えてきた。特に80分からはスイスが立て続けにチャンスを得る展開となり、勝つどころか、なんとか引き分けで終われば御の字の様相を呈してきた。結局、ドイツはなんとか勝ち越しゴールだけは許さず1-1で引き分けた。

ドイツの勝利を期待して観戦した率直な感想を言うならば「負けなくて良かった」と言える試合だった。試合後のインタビューでも選手たちは反省を口にしており、ギュンドアンに至っては珍しくブチ切れ状態で、よほど試合内容に不満だった事が窺える。特に問題視されたのが前線での無駄なボールロストであり、ここからのスイスの反撃でドイツの選手はかなり疲弊した。

とりわけ、私はこの日スペイン戦に続いてトップ下で先発したドラクスラーの出来には著しい不満がある。攻撃に全権を与えられるポジションながら、その仕掛けは中途半端で相手に全く脅威となっていない。更に前半の決定的チャンスはボールを普通に真っ直ぐ蹴れば入っていたが、わざわざGKのいる斜め前に蹴っており、余程調子が悪いのか、焦ったのか知らないが、もはや代表の椅子も危ういと言わざるを得ない。

ドラクスラーの場合、威勢よくヴォルフスブルクからPSGに移籍したが、今や殆ど試合に出ていない。まあネイマール、ムバッペ、ディマリアがチームメイトの時点でベンチ用員は確定である。まずは再び中堅クラブへ移籍して出場機会を確保してから出直しだろう。

しかし、前線のボールロストが悪いとして、それを再び中盤で奪い返す事ができればチームは安定する。ここで問題なのが、ドイツはその3-4-3のシステムの中央にクロースとギュンドアンの2名しか配置していない。それも、両者は世界屈指の素晴らしいパサーの一方、守備は得意としていないので、前線のボールロストは疲弊した後半は特に常時ドイツのゴール前まで持ち込まれる。そしてそれを追いかける選手は更に疲弊する。

やはり、4バックにして中盤の枚数を1枚増やした方が安定するのではないかと思われるのだが、それをすると今度はカウンターの餌食になるのが怖いのだろう。ロシアW杯であれほどカウンターへの対処を指摘されて再び同じ失敗をすれば、レーヴの首が飛ぶ可能性がある。現在3バックに拘っているのは、その辺りの事情もあるのではないか。

まあ次回からはFCバイエルンの主力、キミッヒ、ゴレツカ、ニャブリいった面々は復帰するだろうから、多少はマシになるだろう。ただ、相変わらず守備の選手、特にサイドバックに関してはかなりの駒不足である。昨年定位置を獲得したかに見えたシュルツはドルトムントで干されて完全に忘れられた存在となった。今回はセリエA、ベルガモに所属するゴーセンスがテストされ、初代表としてはまずまずの出来だった。クラブで余程の絶不調に陥らない限り、次回もチャンスを与えるべきだろう。