2019年ドイツで最も醜悪な言葉は“Klimahysterie“

前回2019年の“das Wort des Jahres“ドイツを象徴する言葉、“Respektrente“を紹介したので、今回はそれに続き2019年の“Unwort des Jahres“、つまり最も醜悪な言葉を紹介したい。昨年はCSUの政治家アレクサンダー・ドブリントが発した、“Anti-Abschieb-Industrie“だった。

そして今年選ばれたのは、“Klimahysterie“という比較的分かり易い言葉となった。見ての通り、“Klima“と“Hysterie“の合成語である。”Klima”は一般的には「気候」とされる事が多いが、ここでは地球温暖化がテーマになっている。”Hysterie”とはほぼ読んで字の如く「ヒステリー」、つまり精神的に錯乱して怒り狂って叫ぶ人、特に女性に対する言葉だろう。グレタのような環境活動家を揶揄した言葉である。

もっとも、この言葉が出現したのは2019年が初めてではなく、かなり以前から利用されていた。Tagesschauによると後々AfDの政治家となるコンラート・アダムが既に2004年に新聞に書いていたとの事である。更にアメリカでも2006年ごろにかけて“Global warming hysteria”或いは “climate hysteria“という言葉で頻繁に利用された。

そして昨年この”Klimahysterie”という言葉は突如再び頻繁に使用されるようになった。ドイツでは一昨年あたりから地球温暖化問題が最大の政治テーマとなっており、世界的にも急速な地球温暖化対策を求める若者たちの運動”Fridays for future”が起こったのは既に皆が知るところだ。

これに対してAfDを始めとした右派ポピュリストは地球温暖化はのっけからデマであると言う立場をとっており、地球温暖化対策を主張する人々は単なるヒステリーだと主張した訳である。非常に残念な事であるが、このような他人を蔑める言葉を大衆は好むので多くの人々がこの”Klimahysterie”と言う言葉を耳にする事になった。

選考委員のスポークスパーソンのインタビューによると、この”Unwort des Jahres”の選定の際は全ての委員の意見が合致するまで議論を続けるとの事だが、昨年に関してはこの”Klimahysterie”であっさり意見が一致したらしい。何故ならこの言葉は人々を混乱に導き、更には議論のレベルを著しく落とすものだからだ。

もっと具体的に言えば、地球温暖化問題というのは科学的な根拠に基づいて議論をしなければならないが、この”Hysterie”と言う言葉で地球温暖化対策に参加する者は全て単なる「精神異常者」というレッテルを貼る事である。つまり、地球温暖化問題というテーマが科学的な次元から病的な次元に転嫁され、議論のレベルが著しく低下する事だと理解できる。この言葉は政治、学問、メディアなどの分野を問わず頻繁に出現したとされる。

もちろん、地球温暖化対策をする事によって、これまでのライフスタイルを急激に変更する必要が生じ、生活が困難になる人々が存在する以上、グレタが主張するようにすべてを急激に変える事は現実的には不可能だ。しかし、これらの急進的な勢力を「ヒステリー」つまり単なる精神異常者のような物言いで片付けるのは、全く持って非科学的、非建設的だろう。

また、AfDのように地球温暖化はのっけからデマであると主張する人々もそれ相応に存在する模様であり、私はその科学的信憑性がどの程度か分からない。しかし、最近の異常に暑い夏、昨年の異常な大雪、今年の異常に暖かい冬などはこれまでになかった。あくまで、これまで生きてきた体感から言えば、明らかに最近気候はおかしくなって来ているだろう。