知っての通りドイツは脱原発を決定しており、来年2022年には全ての原子力発電所が停止する予定となっている。更にこれまでの主要な電力源であった石炭、褐炭での発電も温室効果ガス削減の為に遅くとも2038年には停止する予定である。つまり、ドイツの今後の主要なエネルギー源は太陽光や風力などの再生可能エネルギーとなる。
しかし、再生可能エネルギーの最大のデメリットと言われているのが、言うまでもなくその不安定さである。ドイツで多いのは太陽光、風力発電だが、これはもちろん太陽が出なければ、風が吹かなければ発電する事ができない。確かに過去10年で電力が不足した事など無いとは言え、今後長い目でみれば原発のみならず、石炭、褐炭からの電力も無くなる。そのような状況で今後も大丈夫などと誰も言えないだろう。
この問題の解消に貢献するとされているのが、先週公式に開通したドイツ、ノルウェー間の海底電力ケーブル”Nordlink”である。このケーブルは海底を通る合計623kmの長さで、2016年9月より工事が進められていた。つまり、このケーブルの完成によってノルウェーとドイツの間で電力の輸出入が可能になる。
そして何故ここでノルウェー出てくるかと言えば、ノルウェーの電力のほぼ全部は水力発電によって賄われているからだ。仮に風も吹かず、太陽の出ない日が続き発電が十分に出来なくても、ノルウェーからの水力発電からのエネルギーを輸入する事で対応が可能になる。
また、逆に風の強い日や晴れの日が続き電力が余る状態になればドイツはノルウェーにその電力を安く輸出する事が可能になり、これはノルウェーにも当然メリットなる。つまりこれはお互いに電力の不足を凌ぐだけでなく、自然エネルギーの効率の良い利用で価格の高騰を抑える事にも寄与すると言う事である。非常に分かりやすい、お互いにとってWIN-WINの取引だろう。
今後はこのようなケーブルが欧州間で張り巡らされ、広域で再生可能エネルギーの受け渡しが可能になる事が望ましい。事実そのような計画があるそうだ。
ただドイツに関して言えば、国内の北から南へ電力を輸送するケーブルの建設が遅延しており、これらは2025年前後にようやく完成する見通しである。海を通すケーブルがおよそ3年で出来たのに、陸のケーブルでそんなに時間がかかるものかと思うのだが、やはり工事をする場所の住民の反対やデモなどがあるからだろう。
確かに再生可能エネルギーだからと言って、全てがバラ色な訳ではない。しかし、原発による人体への危険性や、カーボン発電による気候、生態系への悪影響はもはや人類の存亡に関わるもので、そのような代物を今後も推進していく事に私は著しい違和感があると言っておく。そう言いう訳で、内陸へ向けてのケーブルも迅速に完成させて頂きたい。とりあえず”Nordlink”の完成は最近にしては珍しく、各方面から非常に高く評価されている事は確かだ。