ドイツ政府と州、急遽11月末までの準ロックダウン措置に踏み切る

ドイツでは10月に入ってから新型コロナの新規感染者が激増しており、現在では1日に2万人近くが感染している状況となっている。この状況に際してドイツ政府と州は既に先週会見を開き、11月2日から末まで、準ロックダウン措置を採ることを発表した。ざっくり言えば、テイクアウトを除くレストラン、映画館、メッセ、ジム、レジャー施設などは完全に閉まる。

他にも、プライベートの旅行や訪問、遠足などは自粛するよう勧告されており、ホテルは宿泊者を受け入れてはならない。公共の場で会えるのは最大2世帯、最高10人までとなる。屋内などのパーティなどは「容認できない」とされた。

一方で学校、保育所などは引き続き開いたままとなり、散髪屋、或いは整体などの医療サービスも引き続き可能になる。4月のロックダウン時には真っ先に学校、保育所が閉まったと記憶しているので、この点が当時と大きく異なる点であり、不幸中の幸いだとも言える。子育てをした事のある方々はわかるだろうが、この状況で家で子供の面倒を見る負担は尋常ではない。

当然この準ロックダウン措置で営業停止を余儀なくされる企業、個人経営の店舗などは甚大な被害を被る。4月のロックダウンから再起をかけて必死に努力してきたにも関わらず、ここで再び強制的に営業停止になる事に私は心底同情する。

しかしながら、その損害の大部分は国が補填する。最大50人までの企業には前年同月の売り上げの75%が補償され、更に大きな企業はEUのルールに従って決定される。前回のロックダウン時にあれ程贅沢な補償を国民に施しながら、更に国がこれだけの救済措置が取れるのは個人的には驚いている。これもこれまでドケチな黒字財政を続けてきた成果かもしれない。

また、これまでのコロナルールはドイツ政府が基本的な方針を定めた上で、最終的に州によってまちまちだった。しかし今回の準ロックダウン措置に関してはドイツ全土でほぼ統一したルールが適用される。私の住むバイエルン州はこれまで常に他州に比べて厳しめの措置が採られていたが、今回は確認する限りそう言った事は無い。

今回急遽このような準ロックダウンになった背景としては、当然のことながら爆発的に増加する新規感染確認者に加え、テストの陽性率が上昇している事が大きいだろう。ドイツは現在では週に136万件のテストを実施しており、現在の陽性率は5,62%である。これは夏場のバカンスシーズンでは1%以下だった。

つまり、単にテストが増えているから多くの感染が確認されているだけでなく、実際に感染者が増えているという事だ。EUによればこれが4%を越えれば危険信号であり、ドイツは既にこれを超えている。もっとも隣国のフランスは既に10%を超えており、更にチェコに至っては30%を超えるという異常な数値になっている。

もう一つ重要なのは、やはりドイツ人にとって1年で一番重要なクリスマスの時期を何とか通常に近い状態で持ち堪えたいと言うのがあるだろう。この時期に病院が重傷者で満杯になったり、家族を訪問できない状態になるのは是が非でも避けたい。逆に11月は1年の中でももっとも憂鬱な月である。外に出て出来ることも、そもそも少ない。

とは言え、これまで皆がマスクやらソーシャル・ディスタンス、20分置きの換気など、多くの人が真面目に取り組んで来たと言うのに、ここに来て再び準ロックダウンとはかなりストレスが溜まるだろう。特にマスクに関しては高額の罰金を課されることもあり、私の見る限りほぼ皆が着用しているが、結局感染拡大を防げてはいない。

現在のところ、国民の過半数はこの準ロックダウン措置を止むを得ないものとして受けとめているが、4月のロックダウンよりも明らかに反対意見は多い。詰まるところ、真面目な人間こそ損をしているという雰囲気が蔓延しつつあるのは事実だろう。

労働組合などはこの時期にストライキを敢行し、社会を混乱させた挙句給料アップを勝ち取っている。ルール違反ではないが、皆が我慢している真っ最中にゴネたものが得をする好例だ。

それこそ、テストなどせずに問題がそもそも無い事にしてしまった方が、皆にとっても都合が良いのではないかとも思える。私の身の周りで陽性になった人もいなければ、インストールしたコロナアプリでも感染リスクは「低」のままだ。おそらく、多くの人が同様なのではないか。わざわざ問題のないところに、問題を作っているだけという感覚が出てくる。

現在のところ最大の希望は、近いうちにワクチンが完成するというニュースだが、これも皆に行き渡るまでは時間がかかるだろう。この先どうなることやらさっぱりわからないが、健康に留意して引き続き我慢するしかない。