2020年よりおよそ3年もの間我々の生活を縛り付けて来た新型コロナ・パンデミックは遂にこの程終息したとの見解が発表された。この見解を述べたのはドイツで最も著名かつ影響力のある細菌学者であるクリスティアン・ドロステンである。私が理解する限りドロステンは「我々は新型コロナに関してこの冬初めて限定的な流行を迎えており、私の見解ではこれでパンデミックは終息」と発言した。
普通に考えればこれは一学者の見解に過ぎないのだが、ドロステンはパンデミック当初より政府のアドバイザーとして中心的な役割を果たしてきており、これまでのコロナ政策で決定的な影響力を持つ人物でもあった。
もちろんドロステンは政治家ではなく学者なので、政策の最終決定に関しては距離を置いていたとは言え、その発言にはかなりの重みがある。またドロステンはこれまで各方面から出て来るコロナ楽観論や緩すぎる政策、ルールを無視した外出行為などに度々苦言を呈するなど、今回のパンデミックに関してはかなりの慎重派に属する学者でもある。
そのドロステンが言ったからには政府公の発表でなくとも事実上の国内パンデミック終息宣言に受け止めて良いだろう。唯一の懸念は強力な変異株が出現する事だとしているが、そういった兆候は今のところ無いとの事である。他の著名な学者も概ね同様の見解を示している。もちろん、あくまで「パンデミック」の終息であり、コロナ自体が撲滅された訳ではない。
ドロステンによれば、決定的だったのはやはりワクチン接種キャンペーンだったとの事だ。これはワクチン接種を推進せずいきなりゼロコロナ政策を転換した現在の中国の状況を見れば明らかだろう。
加えてドロステンは初めからパンデミックをストップする事は不可能だったのは分かっていたが、仮になにも対策をしなければドイツでデルタ株の流行までに100万人以上の死者が出ていたと述べている。つまり、あくまでワクチンが出来るまでは、外出を制限したり接触を減らす事は必須だったと言う事だ。
いずれにしても、今後も局所的な流行や高齢者のワクチン接種が推奨され得るとは言え、これまで我々の生活に様々な制限を掛けてきたコロナルールが今後速やかに撤廃される事が予想される。既にバイエルンでは今月中旬より公共の交通機関でのマスク着用は撤廃されており、今後他の州もこれに続くと予想される。
また、今回の事実上の終息宣言は人々の心理にも影響を与えると思われ、つまり誰も後ろ指を指されることなく外出し、パーティなどを楽しむ事ができると言う点で大きな意味がある。今回の発言はインフレの影響などで経済が落ち込む中、人々の動きが活発化する意味合いもある。ちょうど今日は大晦日で、昨年とは異なり多くの人が花火を楽しみに街に繰り出すのではないか。