ミュンヘン、ドイツで最も空気が汚い都市の称号を得る

ドイツ人と言えば一般に環境意識が高いというイメージがある。確かに個人レベルではその通りだと思うが、それで実際に地球や人間に優しい社会が作られているかと言えば必ずしもそうではない。とりわけ、都市部の空気の汚さから言えばドイツは完全なEUの問題児として扱われている。その問題視されているドイツの都市の中で最も空気が汚いのがミュンヘンだ。

この不名誉な称号は長らくシュトゥットガルトだったが、昨年ミュンヘンが追い抜き1位になった。問題となっているのは主にディーゼル車が排出している窒素酸化物だ。実際市内中心部マリエン広場の地下駐車場など入ったら本当に毒ガスでも吸ってる気分になる。

まあ私もディーゼル車を利用しているので偉そうには言えないが、ミュンヘンの空気の汚さは住んでるものから言わせれば全く驚きではない。昨年のミュンヘンの窒素酸化物の数値はEUが定める基準値のおよそ2倍に達しており、早急な対策がEUから求められている。

そういう訳で、バイエルン州はミュンヘン市でのディーゼル車の締め出し計画を提出するよう義務付けられているが、州はやる気のない計画を提出しディーゼル車の締め出しを拒否している。ミュンヘンで登録されている車の4割以上はディーゼル車であり、それが締め出されるとなると甚大な影響があるからだろう。この為、バイエルン州は裁判所に訴えられて4000ユーロの罰金を払わされているが、州からすればそんな程度の罰金屁でもない。

そこで最近、新たな案としてバスや地下鉄などの近距離の公共交通機関をすべて無料にするというアイデアが政府から出ている。私はこれは冗談だと思ったが、実際にいくつかの都市でこのアイデアはテストされるらしい。

仮にもしもミュンヘンで実現すれば皆が公共交通機関を利用するから、状況は劇的に改善するだろう。しかし、ミュンヘンの交通機関は既にパンク寸前であり、これ以上の利用者を受け入れる余裕はない。新しい機材や人員を確保、路線を増強するのにも当然金や時間がかかる。現段階では非現実的な話だ。

しかし、全てが無料と行かないまでも、公共交通機関の利用を促進するというのは正しい。利用者一人あたりのバスや地下鉄での移動に消費するエネルギーは車の約半分であると言われている。また、それにより道路のような危険かつ効率の悪い場所が減り、歩行者を中心としたより人間的な空間も増えることが期待される。街の景観としてもそちらの方が望ましい。

何れにせよ、ミュンヘンをはじめとしたドイツの都市は問題となっている大気汚染に早急に対策を講じる必要があり、さもないとEUから裁判所に訴えられる可能性が高い。ここで敗訴した場合、高額の罰金を払わされることになる。そのような事態になると庶民の生活を直撃するような強引な措置が現実味を帯びてくるだろう。