ドイツでオートマ車が未だに普及していない理由を考えてみた

もう私が子供の頃、それこそ20年以上も前の話だが、私の母親が「もうこれからは車はオートマチック車に限る」と言っていたのを覚えている。その通りに日本は私が大人になり車の免許を取る頃には殆どの車がAT車だった。一応マニュアルの免許を取ったが、マニュアル車など一生運転しないだろうと思っていたし、事実日本でマニュアル車を教習所以外で運転したことはない。

ところが何の縁かドイツに移住して車を運転する必要に迫られると逆にAT車は殆ど無いのだ。その状況は徐々に変わりつつあるのは確かだが、未だにドイツはマニュアル車の方が圧倒的に多いと言って良い。アメリカや日本では今や9割以上がAT車の一方で何故ドイツで普及していないのだろうか。

まず挙げておきたいのは単純にAT車は高いという経済的な理由である。私の記憶が正しければ、嫁が買ったトヨタ・アイゴもATにするだけで600ユーロは高くなった。もっと大きなクラスなら数千ユーロ余計に払う。AT車の方が快適なのは間違いないとは言え、これだけ高くなるなら別にマニュアルでも構わないと思うのだろう。私も現段階なら自分が運転するならAT車にそれだけ払おうとうは思わない。どうせ払うならクルーズコントロールやスピードリミッター、或いは座席暖房だ。こちらの方が個人的には重要度は高い。

またドイツではAT車は燃費が悪いと言う根強い偏見があることが挙げられる。実際に嫁のアイゴも国道に出て加速するとワオーンという唸り声を挙げてスピードを上げる。どう考えても燃費が悪いし、運転していても気持ち悪い。このアイゴはATモードとマニュアルを切り替えれるようになっているので、私はマニュアルモードに切り替えて運転するようにしている。しかし、これはおそらくアイゴのような小型車の場合に限るであろうと思われる。ここから上のクラスになってくると最近のAT車の燃費はマニュアルより寧ろ良いらしい。ADAC(日本で言うJAF)も同様の見解を示しており、この偏見は徐々に取り去られつつある。

そしてこれはあくまで個人的な見解だが、ドイツ人にとってAT車は退屈であろうということだ。それは彼らの運転スタイルから読み取れる。特に急発進、急加速、超スピード、割り込み、追い越し、はたから見ればまるでF1レーサーみたいな運転する連中も結構いる。これは決して男性に限らない。例えばそのようなドイツ人にとっては間違いなく自分の思い通りに車を操れるマニュアルの方が楽しいだろう。

こう言う運転をドイツ語では”sportlich fahren”直訳すると「スポーツ的な運転」と言う。まるでこう言う運転が格好いいような響きであり、恐らくそのような運転をする多くのドイツ人はマニュアルの方が格好良いと思っているだろう。私みたいな悠々と運転したいタイプには迷惑千万であるが、高速道路も時速無制限だったりするし、そういう国であり人間なのだ。

因みに私の現在の車はマニュアルだが、これは純粋に経済的な理由によるものである。そのうち価格ももっと下がり、私自身も歳をとり体力が少なくなってきたらAT車に乗り換えるだろう。特に最近酷くなる一方の渋滞の中では圧倒的にAT車の方が楽だ。燃費に関する偏見も取り去られつつあるし、今後はAT車の割合がドイツでも増えていくことが間違いないと言われている。