メルケルの後釜に座ると目されている2人の政治家

昨年9月に総選挙が実施されてから実に約6ヵ月、先週ドイツはすったもんだの末に第4次メルケル政権が誕生した。当初発足するとみられていたCDU/CSU,Grüne,FDPの3党によるジャマイカ連立の交渉が決裂して以降、再選挙か過半数割れ政権かさまざまな憶測が流れたが、多くの反対がありながらも最終的には前期に引き続きCDU/CSUとSPDの2大政党による大連立政権の発足に落ち着いた。

しかし、これによりメルケルは辛うじて4期連続の首相の座に留まることを許されたものの、国民および党内外からその求心力は著しく低下していることは否めない事実であり、来期以降の続投はまずあり得ないと見られている。そして、そのポスト・メルケルに誰が座るかという議論が既にドイツでは始まっており、そこでは主に2人の政治家の名前が取り沙汰されている。

まずは今年メルケルから新たなCDUの党幹事長(Generalsekretärin)に任命された女性政治家、アンネグレート・クランプ=カレンバウアーだ。1962年にザールラント州のフェルクリンゲンに生まれた彼女は、2000年以降主に内政に関する様々な要職に就いており、党内きってのオールラウンダーとして着実に実績を残した。2011年から今年の初めまではザールラント州の首相を務めていた。

そして、このザールラント州の首相として彼女は極めて安定した政権を築き、CDUの苦戦が予想された2017年3月の州選挙も圧倒的な支持を集めて勝利に導いた。その手腕は絶賛されており、党内大会でも彼女の登場で雰囲気が一変する程の期待を集めている。そして現在ではメルケルが最も信頼する政治家の一人としてその地位は揺ぎ無いものになりつつある。

その政治スタイルは地味だが堅実、現実主義と言う点でメルケルに似ていると言われており、政治的スタンスもメルケルに近い。しかし、難民問題などではメルケル路線を支持しながらも、同性婚には反対しており、メルケルとは若干異なる部分もある。またキリスト教的な人間像を重視しており、この点ではやや保守的な印象も与える。

この度彼女が就いた幹事長と言う役職は、後々に首相候補となる人物のステップアップの役職として定着しており、メルケルもかつてはこの職に就いた。これはつまりクランプ=カレンバウアーが近い将来党のトップに立ち首相候補としてメルケルの後釜に座ることを想定した人事と言われている。事実彼女はアンケートでもメルケルの後釜として最も高い支持を集めており、今のところ彼女がポスト・メルケルの第一候補となる。

そして、このクランプ=カレンバウアーの対抗馬と目されているのが、現在37歳の若手政治家であり、新政権において健康省に任命されたイェンス・シュパーンである。シュパーンは190㎝を超える大柄な体格に、メディアの露出も多く、また同性愛者という事もあり、外見的にもそのプロフィールから言っても堅実で目立たないクランプ=カレンバウアーとは正反対の印象を与える。

実際にシュパーンはCDUにおいてその保守的な主張で反メルケルの急先鋒と言われている。代表的なのが、移民難民政策においてメルケルの主張とは真っ向から対立することであろう。また、ドイツ的な文化、価値観、教育を重視した発言で注目を浴びる事が多い。AfDの支持者にも一定の理解を示しており、その政治的スタンスはCDUの中でもかなり右よりである。

この主張は当然メルケルの移民難民政策でうんざりしている国民から支持を集めており、その政治家としての実力とも相まって将来の首相候補として期待されている。メルケルは自らに反対する右派勢力からの批判を封じる為に、このシュパーンを敢えて新政権で閣僚に任命した。

まだ37歳という年齢に加え、健康相という役職からこれまでのように難民問題などに公に発言することは難しくなると予想されるが、その姿は先にオーストリアで同じく保守的な主張で30歳で首相の座についたセバスティアン・クルツと重なる部分がある。

この他にも防衛相のウルスラ・フォン=デア=ライエンや農業相であるユリア・クレックナー、経済エネルギー相のペーター・アルトマイヤーなどの名前が取り沙汰されている。また、過去4年で世の中が一変したように、今後4年も何が起こるか分からない。しかしひとまず、クランプ=カレンバウアーとシュパーンの2人のうちのどちらかがメルケルの後釜に座る確率は高いと予想されている。

にほんブログ村 海外生活ブログ ドイツ情報へ