00年代ドイツ代表のベストマッチ、06年W杯準決勝イタリア戦

延長戦が始まるとイタリアはMFカモラネージに代えてFWのイアキンタを投入し、中盤よりもフィニッシュを意識した戦術に切り替えてきた。そして、イタリアは延長開始早々ビッグチャンスを得る。右サイドでメッツェルダーを振り切ったジラルディーノはそのままPAにドリブルで侵入し、最後はヘルプに戻ってきたバラックを交わして至近距離からポストに当たる決定的なシュートを放つ。

更にコーナーキックのクリアボールをザンブロッタが強烈なシュートを放ち、これもバーを直撃した。イタリアは更にMFペロッタに代えてFWデル・ピエロを投入し、合計4人のFWで試合を決めにかかる。

一方ドイツも右サイドのオドンコールのクロスからポドルスキがフリーでヘディングシュートを放ち、必死の抵抗を試みる。ポドルスキは更に111分、ペナルティエリア左からフリーで得意の左足から強烈なシュートを放つが、これはコースが甘くブッフォンのセーブ阻まれた。試合は殴られたら殴り返す完全なオープンな展開ながら、両チーム無得点のまま試合はPK戦に突入と思われた。

しかし終了間際、イタリアは遂に均衡を破る。右コーナーキックのこぼれ球を拾ったピルロは再び右サイドに展開すると見せかけて、ノールックでPA内のグロッソにスルーパスを出し、これをグロッソがダイレクトでゴール左の完璧なコースへシュートを決めた。119分というドイツにとっては絶望的な時間帯の失点にスタジアムは静まり返る。

そして、更にその2分後、最後の総攻撃を仕掛けてきたドイツに対し、イタリアはカウンターからデル・ピエロが得意の右45度の位置から鮮やかなゴールを決めて2-0とし、このゴールと同時に試合終了となった。ドイツの国家的プロジェクトでもあった自国W杯での優勝の夢はイタリアによって打ち砕かれた。

延長戦終盤まで両チーム無得点の試合ながら、非常に攻撃的な両チームのスリリング試合であり、この試合はこの大会のベストマッチに数えられる。そして、特にドイツに関しては実力で劣りながら、試合を通じて高い集中力、フィットネス、精神力を見せ、持てる力を存分に出し切った。

私の中では00年代のドイツ代表のベストマッチといって良い試合だ。選手たちは国民に大きな感動と誇りを与え、スタジアムの観衆も選手たちに惜しみない拍手を送り健闘を称えて応えた。敗れてここまで讃えられるドイツ代表は私は後にも先にも見た事がない。

試合内容に目を移せば、最終的にこの試合勝敗を分けたのは、やはり各ポジションに揃うイタリアの高い個々の能力であることに疑いの余地はない。とりわけ119分という誰もがPK戦の考えた時間帯に、勝負を決する天才的なパスを繰り出したピルロはドイツには無いクオリティだった。ピルロは6年後のEURO2012の準決勝でもドイツの前に立ちはだかり、優勝候補と言われた若いチームに辛酸を舐めさせた。

更にイタリアの鉄壁の守備を言及せずにはいられないだろう。当時世界最高で現在でも現役を続けるレジェンド、GKのジジ・ブッフォンに加え、当時これも疑いの余地なく世界最高と呼ばれたDFカンナヴァーロを中心とする守備陣を崩す事は至難の業だ。特にカンナヴァーロは圧倒的な対人プレーの強さに加え、全くと言って良い程ミスを犯す事なく、ドイツの攻撃も例によってほぼ完璧に封じ込んだ。

ドイツにとって痛かったのはやはり中盤の底でのバラックのパートナー、フリングスが累積警告で出場停止となった事だろう。代わりに出場したケールの出来は悪くなかったが、フリングスほど守備面でバラックの負担を軽減する事が出来なかった。やはりバラックが前線でそのヘディングの強さと決定力を活かせなければ、強豪国に対抗するのは難しい。

また、この大会のドイツは優秀なサイドアタッカーを欠いた。攻撃のパートを受け持ったMFであるバラック、ボロウスキ、シュナイダー、シュヴァインシュタイガーはいずれも中央でのプレーを好む選手だ。更にサイドバックも左のラームが右利き、右のフリードリッヒはそもそも攻撃を得手にしておらず、攻撃はどうしても中央から2トップに当てる形が殆どだった。その意味でもほぼ毎試合ジョーカーで出場したオドンコールは唯一のサイドアタッカーとして機能したが、技術経験ともにスタメンで使えるレベルにはなかった。

しかし、ドイツはこの2006年のメンバーの力を底上げ、ポドルスキを2列目の左にしてサイド攻撃を強化、バラックをトップ下に配置する布陣をオプションに加えてEURO2008で準優勝した。シュヴァインシュタイガー、ポドルスキ、ラーム、メルテザッカーといった選手が新しい時代の旗手として台頭し始め、ドイツ代表は再び世界で存在感を放つようになる。