ユーロビジョンで4位に食い込み、名誉挽回に成功したドイツ

先週の土曜日にヨーロッパではユーロビジョン・ソング・コンテスト(以下ESC)いわゆるヨーロッパの国別対抗歌合戦が開催された。ドイツは直近3回の開催で参加26カ国中の最下位、最下位、ブービー賞という壊滅的な成績を収めている。音楽という趣向に極めて個人差のある分野において、これ程の酷い成績は普通あり得ない。

これは音楽のみならず娯楽分野におけるドイツのセンスの無さが存分に現れているか、或いは他のヨーロッパの国が異常にドイツを嫌いだとしか思えない低迷ぶりだ。今回この不名誉なレッテルを剥がす為にドイツが送り出したのは28歳のシンガーソングライター、ミヒャエル・シュルテのYou Let Me Walk Alone”という曲である。

このミヒャエル・シュルテは、2月に行われた国内の選考会で優勝して今回ポルトガルで開催されたESCにドイツ代表としての出場を決めた。曲のYou Let Me Walk Aloneはシュルテが14歳の時に他界した父を想って作られた英語歌詞のポップバラードである。

この選考会においては視聴者の投票、この選考会用に選ばれた100人のパネル、更には国外からも含めた審査員の評価によって勝者が決定するシステムであり、シュルテはこの全てから最高点を獲得し、ダントツの勝利だったと言って良い。私は音楽には詳しく無いが、その風貌からはエド・シーランを彷彿とさせる。シュルテは国内で人気の正統派キャスティングショーあるThe Voice of Germanyでも2012年に3位に入った事があるので、見覚えのある顔だった。

そして、このシュルテであるが、趣向を凝らしたユーモアのある演出で視聴者や審査員のインパクトを狙った他国の路線とは一線を画し、小細工なしの歌のみでの勝負に出た。そして結果的にはこれが吉と出たと言える。

確かに、歌の内容からいって明るい話ではないので華やかな演出は当然できないとはいえ、そのシリアスさと感情のこもった歌唱と歌詞は視聴者の胸を打ったであろう。結局、真面目で堅物、派手な事は苦手な国民なので、それなりに真面目路線で行くのが正しいのかもしれない。これまで壊滅的な成績を考えれば4位と言うのはドイツにとって望外の成功だ。

また今回優勝したのは”Toy”という前衛的なエレクトロポップを歌ったイスラエルのNettaという歌手である。その衣装や奇抜な曲、演出に好みが相当分かれそうな音楽だが、私の中でもこのNettaが断然1番だった。その奇抜な演出のインパクトだけでなく、ユーモアもあり、音楽性、芸術性も高かったように感じた。視聴者の投票で1位、各国審査員のポイントで3位という両方で高得点を出して優勝した。

因みに、ESCは以前は視聴者からの投票のみで勝者が決められていたが、前回あたりから審査員の評価も加わるようになった。これは音楽性、芸術性を無視してただ単にインパクトだけを狙ったり、過度に政治的なメッセージを込めた曲が優勝したり上位に食い込んでくる事が続いたからだろう。これにより、結果発表のスリルは軽減したが、音楽の祭典としてはフェアで正統な物に近づいた。

しかし、やはり審査員のポイントと視聴者のポイントには一部かなりの乖離が見られた。例えば、毎回スタイリッシュで完成度の高いアーティストと曲を送り出して来るスウェーデンは審査員ポイントで2位ながら、視聴者投票でたったの21点しか獲得できず今回は総合7位に甘んじた。また、審査員投票で1位だったオーストリアも、視聴者投票で13位だった。大衆の好む物とその分野で質の良い物は必ずしも一致しないという事だ。その意味でも、審査員で3位、視聴者で6位とバランス良くポイントを稼いだミヒャエル・シュルテは評価されて然るべきだろう。

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