アメリカの関税措置で、ドイツ経済への悪影響が懸念されている

来週はW杯が開幕するので、私の興味はほぼそちらに集中しつつあるが、世界ではより重要な事が進行している。先日カナダでG7が開催されており、これは当然ドイツにとっても極めて重要なサミットであった。そして、ドイツ、そしてEUにとっての問題は言うまでもなくアメリカ大統領ドナルド・トランプの存在である。

昨年の今頃は、まだトランプは何をしてくるか分からない段階で、多くの疑問があったはずだ。巨大で、かつ不確定要素の多い不気味な存在だったと言えるだろう。しかし、その答えははっきりしてきた。パリ協定の離脱、イラン核合意の離脱、エルサレムの首都認定、これらの一方的かつ世界秩序、持続可能性を無視した決定は世界を混乱させている。そして、最近は遂にアルミ鉄鋼の輸入に対する関税を実効化させ、更には車ににも関税をかけると脅してきた。これらは、輸出大国であるドイツでも当然悪影響が懸念されている。

まずは鉄鋼アルミに関しては、ひとまず直接的な影響はそれ程深刻なものでは無いと見られている。経済相のアルトマイヤーによると、ドイツの鉄鋼は非常に高品質で特殊な用途に利用される為、仮に関税のために価格が上昇してもアメリカは引き続き買わざる得ないとの事だ。つまりドイツよりもアメリカ自身への悪影響が大きいとの見方を示している。

しかし、懸念されているのは間接的な影響である。アメリカは中国やロシア、トルコからも鉄鋼の輸入にも既に関税をかけており、これまでアメリカに輸出されていたこれらの低品質な鉄鋼がダンピング価格で大量にEUに入ってくる可能性がある。仮にそうなると、ドイツ国内の鉄鋼製造業者は強烈な低価格競争に巻き込まれる。特に中国は既に需要以上に大量の鉄鋼を生産しており、非常に警戒されている。場合によっては、これらの輸入を制限することも指摘されている。

車の関税に関しては当然ドイツにとって非常に直接的な悪影響が懸念されている。常識的に考えればこれは脅しの範疇から出ないと思うが、トランプは余りにも何を突如仕掛けて来るか分からない不確定要素が大きすぎるので、油断はできない。

EUは既にアメリカからの輸入に対し報復関税を予告しており、7月から実効化されるとの予定だ。具体的には、アメリカから輸入されるウィスキー、ジーンズ、オートバイ、ピーナッツバターが該当する。つまり、これらの品物はEU圏内で今後品薄となり、それに伴って価格が上昇することになる。我々消費者にとっても喜ばしくないニュースだが、残念ながらこれは止むを得ないだろう。

しかし、問題なのはこのトランプが仕掛けた関税措置ではEU、ドイツだけでなくアメリカ自身にも甚大な悪影響が懸念されている点である。それは、仮にアメリカだけが損をしたとしても、アメリカだけの問題ではない。パートナーであるEUの問題でもあり、世界的な問題になる。

本来、EUとアメリカはパートナーシップ、つまりお互いのWIN‐WINに基づいて話し合える相手だった。それが不可能になっている現状は非常に憂慮すべきだと言える。ZDFのアンケートによると、トランプを信頼できるパートナーと回答したドイツ人は全体の12%だった。ドイツとアメリカの関係は、残念ながら非常に冷え込んでいる。