ロシアW杯開幕: ドイツ代表の優勝への期待は、かつてないほど大きい

昨日ロシアW杯が開幕した。ここから大会期間中約1ヶ月間、ドイツはサッカー一色になる。国内の政治経済にまで多大な影響を及ぼす、ドイツ人にとって最大のスポーツイベントだ。前回大会で優勝したドイツ代表は、今大会は連覇の期待がかかる。そして、その期待はかつて無いほど大きいものだと言える。

ZDFの調査によると、ドイツ代表の優勝を予想しているドイツ人は実に全体の34%にものぼる。優勝した前回大会の際にはこの数値は22%だった。この数値には勿論、若干の願望も入っているのは間違いない。しかし、多少の贔屓目がある事を差し引いても、今大会のドイツ代表は私が過去に見た中でも最高のチームだ。今回ほど優勝を期待して観戦するW杯は過去に無いと言って良い。

現在のドイツ代表の主力を成すのは1990年前後に生まれた選手たちだ。その多くは2009年のU21の欧州選手権を圧倒的な強さで優勝したメンバーでもあり、まさにドイツの黄金世代と言えるだろう。そしてこの世代で現在の主力のうちケディラ、エジル、ノイアー、クロース、ボアテング、ミュラーは2010年のW杯でデビューした。この頃の彼らは国際的にはまだ無名の若手であり、ドイツは決して優勝などを期待できる戦力とは言えなかった。

その2年後のEURO2012ではこの黄金世代の台頭に加え、ラーム、シュヴァインシュタイガー、ゴメス、クローゼ、メルテザッカー、ポドルスキが円熟期を迎え、ロイス、フンメルスという現在の代表の中核の選手も加わり、ポテンシャル的には現在のチームを上回るものだったかもしれない。しかし、スペインを凌ぐ優勝候補とまで言われたこの大会は、老練なイタリア相手に経験不足を露呈して敗れる事になる。華麗で圧倒的な攻撃力を擁す反面、カウンターへの脆さをさらけ出した。

前回2014年W杯はブラジルに次ぐ優勝候補との評価があったものの、直前のテストマッチで攻撃の核であるロイスを怪我で欠き、中盤の底ケディラ、シュヴァインシュタイガーも負傷明けでチームは万全とはほど遠い出来だったと言える。グループリーグでは右SBのフィリップ・ラームを中盤の底へ配置し、4バックを全てセンターバックで固め、更にもともと駒不足のFWには2列目のトーマス・ミュラーを起用して妥協した。ドイツはそれまでレーヴが追い求めてきた華麗な攻撃サッカーを捨て、堅実な戦いぶりに終始し、最終的に4回目の優勝を果たした。しかし、殆どの試合は苦戦の連続であり、7-1で大勝した準決勝のブラジル戦はあくまで例外だったと言える。

2年前のEURO2016では左サイドバックにヨナス・ヘクターという新戦力を発掘し、レーヴは再びリスク満点の超攻撃的サッカーに回帰した。しかし、フィリップ・ラーム、ミロスラフ・クローゼの引退で総じて言えばSBとFWは更に弱体化した言える。とりわけFWの人材不足は深刻であり、マリオ・ゲッツェのゼロトップも脆くも失敗した。更に新キャプテンのシュヴァインシュタイガーは怪我がちで万全とは言いがたく、準決勝のフランス戦では致命的なハンドを犯し、チームの敗退の引き金を引いてしまった。虚しさが残る敗戦の中、大会中に右サイドバックに定着したヨシュア・キミッヒが唯一の明るい材料だったと言えるだろう。