トニ・クロースとマルコ・ロイス、ドイツをグループリーグ敗退から救う

しかし、ドイツはここから立て直した。ドラクスラーに代えてゴメスを投入し、前線はゴメスとミュラーの2トップ、2列目は右にロイス、左にヴェルナーのシステムに変更した。そしてこれは功を奏したと言えるだろう。スウェーデンの守備陣はどっしりとしたFWに対応すべく下がり気味になり、ドイツはサイドの深い位置からボールが入るようになった。ロイスの同点ゴールは内容から言って至極妥当なものだ。

更に勝ち越し点が必要なドイツは、何度か良い形を見せながらもゴールを割ることが出来ない。やはり、FWの決定力という部分でドイツは課題を抱えていると言わざるを得ない。また、鮮やかなコンビネーションで綺麗に崩そうと言う意識が強すぎるのか、仕掛けが複雑すぎる。もっとシンプルに前線のFWに当てる形があっても良いのではないか。カウンターを警戒するのもあったのかもしれないが、スウェーデンは後半かなり疲弊していた。

ドイツが勝ち越し点奪えないまま時間は過ぎ、更にドイツを絶望の淵に陥れたのはボアテングが2枚目のイエローカードで退場になった事だ。前半クロースのパスミスに続き、ボアテング程の経験豊富なDFが冷静さを失うとは殆ど信じがたいが、これが現在のドイツのチーム状態を象徴している。同点に追いついた事で一度は膨らんだ希望もこれで潰えたかに見えた。私を含めた多くのファンはこれで諦めただろう。

そしてこの絶望的な状況をフリーキックから奇跡のゴールで救ったトニ・クロースだが、試合後のインタビューによると、もともとはロイスがあの位置から直接狙いたかったらしい。しかし、クロースはゴールへの角度が悪すぎるためこれに納得しなかった。そこで、一旦ロイスに出して角度を良くしてからクロースが直接狙うという形に話し合って決めたそうだ。

私の記憶では確かにロイスはブンデスリーガの試合であのような位置からフリーキックを決めた事がある。とはいえ、あの角度は直接狙うには余りにも難易度が高いので、通常なら味方の相手に合わせるのが普通だろう。ましてや、ドイツ史上初めてのグループリーグ敗退のかかった試合のロスタイムの最終アクションだ。直接狙うという勇気だけで恐れ入る。

更にこのロイスの勇気に加え、あの形での遂行を決めたクロースの冷静な判断力とコミュニケーション、そしてそれを決めたキックの技術、そして勝者のメンタリティーには脱帽する以外にない。おそらく、これでドイツは幾分解放されるだろう。もしかしたらドイツに必要だったのはまさにこのような体験だったのかもしれない。ドイツのW杯はようやく始まったと言え、メキシコ戦で白けつつあった国内の雰囲気も変わってくるだろう。

しかし、まだドイツは次の韓国戦に勝利した場合でも、スウェーデンがメキシコに勝った場合、グループリーグで敗退する可能性がある。このシュミレーションはかなり複雑なので割愛するが、いずれにしてもドイツは出来るだけ得点差をつけて勝つ必要がある。そして、グループリーグを勝ち抜けたとしても、KOラウンドの初戦はブラジルと対戦する可能性が高い。昨日は勝ったが、依然として課題は山積みであり、厳しい戦いが続くだろう。