W杯は結果が全てなのか、ドイツ代表のファンへの謝罪から考える

昨日のポーランド戦で日本代表は、晴れてW杯のKOラウンドへの進出を決めた。それは大きな成果と言って良いだろう。私は前回のW杯で日本代表の戦いぶりには非常に落胆したし、今回は前評判も低かったので殆ど期待していなかった。ところが、蓋を開けてみれば運にも助けられたにせよ、最初の2試合で期待以上の結果、そして内容を見せてくれた。この2試合が終わった時点では、ファンとして非常に満足だったと言える。

しかし、昨日のポーランド戦、日本代表の最後の10分間のプレーは、さすがに考えさせられた。自らの力でグループリーグを突破できるかどうか決定的な状況で、セネガルが敗れるのに賭けた他力本願の選択をし、サッカーを拒否した。この日本代表のプレーに、ドイツのメディア、サッカーファンの多くは理解を示しながらも落胆している。

日本ではプロスポーツは結果が全てだと言われる。アマチュアでも事実上そうだ。子供の頃からトーナメントで負ければ次はない。オリンピックなどで「絶対に負けられない」などというキャッチフレーズはそれを存分に表している。多くの人は、結果が出た事で西野監督の采配は正しかったと見るだろう。

しかし、この点でドイツの考え方は日本と異なる。そして、それを示す良いサンプルがある。今回、W杯で史上初めてグループリーグで敗退したドイツ代表がファンに宛てた謝罪文だ。これはドイツのスポーツに対する考え方を良く表していると思うので紹介したい。原文をそのまま掲載させてもらう。

Liebe Fans!

Wir sind genauso enttäuscht wie Ihr! Eine WM ist nur alle vier Jahre, und wir hatten uns so viel vorgenommen. Es tut uns leid, dass wir nicht wie Weltmeister gespielt haben. Daher sind wir auch verdient ausgeschieden, so bitter es ist.

Eure Unterstützung war super, in Deutschland und in den russischen Stadien. In Rio 2014 haben wir noch zusammen gefeiert. Aber zum Sport gehören auch Niederlagen und das Anerkennen, wenn die Gegner besser waren.

Wir gratulieren Schweden und Mexiko zum Weiterkommen und Südkorea zum gestrigen Sieg.

DANKE an Russland für die Gastfreundschaft!

ファンのみんな!

僕らは君たちと同じようにがっかりしている。W杯は4年に1度しかない、そして僕らはその為に本当にたくさんの事に取り組んできた。今回、世界チャンピオンのようにプレーをしなかった事を申し訳なく思う。だから僕たちが敗退したのは当然の事だ、悔しいけれど。

ドイツでも、ロシアのスタジアムでも、みんなの応援は素晴らしかった。2014年のリオデジャネイロではみんなで祝う事ができた。でも相手が自分たちより優れていたら、負ける事も、相手を認める事もスポーツの一部だ。

僕たちは次のラウンドに進出したスウェーデンとメキシコ、昨日勝利した韓国を祝福したい。

それからロシア、手厚い歓迎をありがとう!

この文面を読んで分かる通り、ドイツ代表は結果については謝罪していない。あくまで、世界チャンピオンのようにプレーしなかった事、つまり内容が悪かった事を謝罪している。また、内容が悪ければ、負けて当然だとも言っている。そして、多くの国民も同じように思っている。

私も同感だ。負け惜しみも当然あるだろうが、間違いなく言える事は、ドイツではプロでも結果が全てではない。大事な事は全力で取り組み、フェアプレーをする事であり、質の高いプレーでファンの心を掴む事だ。2006年のドイツ代表が良い例だ。この時のドイツ代表はWeltmeister der Herzen =「心の世界チャンピオン」と呼ばれた。

正直言えば、私はことスポーツに関して言えば、ドイツの考え方に共感している。故に、色々と異論はあると思うし、綺麗事だと笑われるかもしれないが、昨日露骨にスポーツを放棄し、他力本願でグループリーグ突破を賭けた西野監督の采配は、私的には結果が良くてもバツだ。

とりわけ、あの極度の緊張感を帯びる場面で、自分たちの手でグループリーグ突破を手繰り寄せるチャレンジを放棄したのは非常に惜しまれる。もしも、あの場面で同点ゴールを決める事ができれば、日本に国際舞台での大きな成功体験を残すチャンスだった。また、私は逆にあそこで返り討ちにあって、仮に日本がグループリーグで敗退したとしても、日本代表は立派だったと思う人間の一人だ。ドイツ代表の言葉を借りれば、負ける事も、相手を認める事も、スポーツの一部だ。

勝てば官軍、結果が全て、というのは世界どこでも共通ではない。そしてこの試合を楽しみにスタンドに足を運んできた観客、そして世界中の視聴者にとって非常に心象が悪かった事は真剣に考えるべきだろう。