ロシアW杯ドイツ惨敗の理由その1 : 自らに対する過大評価

そしてドイツがグループリーグで最も重要なメキシコ戦を甘く見ていた事を端的に示すエピソードがある。この試合、レーヴは大方の予想を覆して2列目の左にロイスではなく、ドラクスラーを起用した。ドラクスラーは悪い選手ではないが、誰が見てもロイスには及ばない。しかし、驚いたのはこの起用は既に5月末に始まった合宿の時から決まっていた事だ。

レーヴはロイスに対し、「トーナメントは長期戦になるから、キミは重要な試合で使いたい…」とかなり早い段階で伝えていたらしい。このロイスの発言はメキシコ戦での敗戦の後のものだ。さすがにロイスもこの発言はマズイと思ったのか、途中で話を変えて丸く収めようとしたが、ドイツがメキシコ、そしてグループリーグを甘く見ていたことが白日の下に晒された。大会が長期戦になるのは、グループリーグを突破する事が前提である。

奢れるものは久しからずと言うが、少なくとも初戦のメキシコ戦に関して言えば、ドイツは相手を舐めていた。

では、ドイツ代表は本来なら世界のトップの実力があったのかと言われると、それも今となっては疑問が残る。何故なら、スウェーデン戦、韓国戦のドイツは超のつく本気モードだったからだ。それであの試合となれば、当然元々の実力にも疑問を持たざるを得ない。

思い当たる事はある。ここ最近クラブレベルで見れば、ドイツは再び欧州での地位を失いつつある。唯一、チャンピオンズリーグで上位進出が期待できるのはFCバイエルンのみだ。そのバイエルンも数年前の強さは無い。

他のクラブに至っては酷い有り様でチャンピオンズリーグは勿論、UEFAヨーロッパリーグで資金力のない東ヨーロッパのクラブに敗れる始末である。この状況は国内のバイエルン1強体制を含めて深刻な状況になりつつある。2013年にバイエルンとドルトムントがCLの決勝を戦い、2014年に代表がW杯の制して以降、ドイツサッカーは明らかに下り坂になっている。

そして、ノイアー、エジル、ボアテング、フンメルス、ミュラー、ケディラ、クロースといった主力選手は確かにそれぞれのポジションでは世界トップの実力者には違いないが、チームの核として沈没するチームを再び引き上げる程の指導力があるのか疑問を呈さずにはいられない。彼らがクラブで結果を出せているのは、周りにチームを引っ張る優秀な選手がいるからではないのか。

FCバイエルンは依然として強いかもしれないが、フィリップ・ラームの引退以降、明らかに勝負弱くなった。トニ・クロースが世界最高の8番なのも、マドリーにモドリッチ、ロナウド、ラモスがいるからではないのか。エジルに至っては加入以降アーセナルの成績は寧ろ下降気味ではないか。

詰まるところ、この自らに対する過大評価が、ドイツの目も当てられないような歴史的惨敗の理由の一つである事は疑いのない事実であろう。