英雑誌エコノミストは例によって今年も世界で最も住みやすい都市のランキングを発表した。ドイツからは私が知る限り5つの都市がランキングに登場している。12位フランクフルト、18位ハンブルク、21位ミュンヘン、25位ベルリン、28位デュッセルドルフという具合だ。
因みにこのようなランキングは他の雑誌でも行われている。別のイギリスの雑誌のランキングではミュンヘンが1位だった。どんな評価基準か知らないが、こんな異常に高騰する不動産価格に、ディーゼルの窒素酸化物で汚れまくった空気の街が1位など本当に眉唾にも程がある。少なくともエコノミストのランキングはこれよりも信ぴょう性のあるものだろう。
評価基準は政治、健康、文化、環境、インフラ、教育であり、この種のランキングとしては世界的に最も注目されている。昨年はハンブルクが10位に入っており、ドイツで唯一トップ10入りしていた。今年の結果を見れば、あくまでドイツで最も住みやすい都市はフランクフルトという事になる。
私はフランクフルトには割と頻繁に行くことがあるが、確かに私の独断と偏見から言っても住むには悪くない街だという印象を持っている。人口は70万人程度で、大きすぎず小さすぎず、程よく緑もあり、活気と同時に落ち着きもある街だ。
地理的にもドイツのほぼ中央に位置しており、交通の便が良く、ここからなら北のハンザ都市や、首都のベルリン、ドレスデンやライプツィヒの東の主要都市、南の黒い森、バイエルン地方、どこへでも比較的簡単に辿り着ける。
また、フランクフルトはドイツの中でもミュンヘン同様ドイツで最も経済的に豊かな都市の一つでもある。何かとドイツの中でもバイエルンの独自色を全面に押し出してくるミュンヘンと違い、フランクフルトは国際的な雰囲気に溢れており、私ら外国人が溶け込み易い街だろう。
特にメッセ期間中は世界各国から多くの人が集い、街は活気に溢れる。出張や旅行でフランクフルトに行くならこのメッセ期間中は避けるのが鉄則だ。ホテルの価格はべらぼうに高くなり、街は渋滞で身動きがとれなくなる。
ネガティブな面として、かつてフランクフルトはドイツの中でも治安が悪いというイメージがあった。しかし、私はこれまでのところ別段そのような印象は持っていない。確かに中央駅前周辺などは如何にもガラの悪そうな雰囲気がある。
しかし、中央駅前の治安が悪そうなのはミュンヘンでも似たようなものだ。フランクフルトに関して言えば、寧ろ以前よりは改善されているという印象を持っている。私はネオナチが幅を利かせてそうなドレスデン周辺の方が寧ろ警戒している。
但し、私らミュンヘンにすんでいる人間からすれば、フランクフルトは近代的なビルが多く、随分とビジネスに特化した街に見える。金融業の盛んな街らしくメガバンクをはじめとした近代的なビルが多く、観光地という雰囲気は無い。ゲーテゆかりの地でもあり、決して文化的な価値の低い街ではないのだろうが、観光目的で行くには物足りないのかもしれない。
さて、このフランクフルトに関して今後注目されるのが、イギリスのEU離脱”Brexit”による影響である。当初はこれにより欧州の新たな金融の中心地がロンドンからフランクフルトに移り、多くの人や仕事がフランクフルトに移転すると見られていた。
しかし最近の報道によると、この誘致合戦はここにきてパリが大幅に巻き返しており、フランクフルトは後塵を拝する形になっている。投資銀行員出身であるフランス大統領マクロンはこの状況で何をすべきか知り尽くしており、適切な手を打った模様である。フランクフルトは当初予想されていた程Brexitのメリットは得られない可能性が高くなっているとの事だ。