来週の9月22日からミュンヘンでは毎年恒例のオクトーバーフェストが開催される。世界最大のビール祭りとして日本でも有名であろう。祭りはミュンヘン中央部のテレジエンヴィーゼと呼ばれる広場で開催され、16日の期間中には世界中からおよそ600万人もの人々が訪れる。
地元ではバイエルン語のヴィーズン(Wies’n)と呼ばれて親しまれており、観光客だけでなく地元の人にも依然として愛されている祭りだ。私も近くに住んでいる以上、何度かこのオクトーバーフェストには訪れたことがある。人々は例によって大騒ぎするので好き嫌いの分かれる祭りでもあるが、ビール好きなら一度は訪れる価値があると思っている。
但しこのオクトーバーフェストであるが、毎度多くの訪問者でごった返しており、平日でなければなかなかテントの中で席を見つける事は難しい上に、この期間に近くで手ごろな宿をとることも簡単ではない。外国から訪問するとなれば尚更であろう。私も数年前の祝日に訪れたが、あまりの人混みで撤退せざるを得なかった。裏を返せばそれだけ世界的に人気のある祭りでもあるという事だ。
しかし、だからと言って諦める必要はない。というのも、ドイツには似たような祭りは何処にでもある。これらの祭りは総じてドイツ語でフォルクスフェスト(Volksfest)と呼ばれ、規模や盛り上がりこそオクトーバーフェストには及ばないが、祭りの形態は同様であり、行けばオクトーバーフェストに近い雰囲気を楽しむことが出来る。
また、これらの祭りはそれぞれの街で伝統的に行われているもので、何もオクトーバーフェストのコピーなどではない。寧ろオクトーバーフェストがそれらのドイツの伝統的な祭りの一つに過ぎないとも言える。
私が調べる限り、バイエルンで最も古い祭りはアーベンスベルク(Abensberg)という街のギラモース(Gillamoos)と呼ばれるものだ。この祭りは1313年から行われており、1810年に始まったと言われるオクトーバーフェストより約500年も古い。この祭りには8月終わりからの5日間で約25万人が訪問する。また、シュトラウビング(Straubing)とい街のゴイボーデンフォルクスフェスト(Gäubodenvolksfest)には8月中旬の11日間で120万人が訪問するバイエルン屈指の祭りだ。
しかし、上記に挙げた2つの村はややアクセスが悪く、ミュンヘン方面からは車が無い少々面倒である。そこで私がよく行くのが、エアディング(Erding)という街の祭りだ。このエアディングの祭り会場にはミュンヘンのSバーンのS2を利用すれば、ミュンヘン中央駅から約1時間で着く。或いは、私は行ったことが無いので恐縮だが、ミュンヘンの南東に位置する街、ローゼンハイム(Rosenheim)でも同様の祭りが催される。ローゼンハイムはミュンヘン中央駅から電車で約40分程で到着する。両者ともバイエルンでは非常に規模が大きい祭りだ。
もちろん、ニュルンベルク、アウグスブルク、レーゲンスブルクといった日本でもよく知られた比較的大きい都市でもこの手の祭りは行われている。そして、これらの大きな街では春と秋の年に2回催される。ミュンヘンも秋はオクトーバーフェストだが、春にはフリューリングスフェスト(Frülingsfest)と呼ばれる春祭りが同様のテレジエンヴィーゼで催される。
詰まるところ、ドイツでは4月から9月にかけて至る所でオクトーバーフェストのような祭りが催されており、暇さえあればそこに行けばビール好きならそれなりに楽しめる。今日紹介したような地方都市の祭りの多くは8月から9月の初旬のバカンスシーズンに合わせて催されるので、今年は残念ながら既に終わってしまっているが、来年以降の参考にはなるかもしれない。
また、これらの地方都市、村での祭りはビールの価格がオクトーバーフェストよりもかなり安い上に、人混みでごった返していないので、比較的ゆったりできる。但し、平日の雨の日などに行くと逆に人が少なすぎて全く雰囲気が感じられないので、ある程度人が入りそうな日に行った方が楽しく過ごせる。
もちろん、オクトーバーフェストの盛り上がりは何物にも代えがたいものがあるだろうし、チャンスがあれば私も再び訪れたい。しかし、これらの地方都市の祭りの方が、地元の人の訪問が多くむしろ伝統的なドイツの雰囲気を楽しめるし、庶民的でもある。
因みに今年のオクトーバーフェストの1Lビールの価格は概ね11-12ユーロだそうだが、その金額なら500mlのビールをひと箱(24本)買える。私の偏見かもしれないが、大体有名すぎるものはコスパが悪い。地味でも程々に良いものを選択するのが、個人的にも好みである。