2026年のサッカーW杯の参加国数が32カ国から48カ国に拡大されることが決定した。このニュースは当然サッカー大国であるドイツで大きな反響を呼んでいる。そしてその反応は既に報道されている通り、この決定に否定的な意見が圧倒的に多い。
私はざっと各チームの監督や引退した名選手、協会関係者のコメントを呼んだが、中には反対意見というより怒り狂っているコメントさえある。主な反対の理由は選手への負担の増大と大会の質の低下だ。そして私もファンの立場から言わせてもらえれば、この参加国の拡大には反対であり、少なくとも時期尚早である。
個人的に私がファンとして懸念しているのが実力が離れたチーム同士の対戦である。この場合、一方がボールを保持し、一方はひたすら守り倒すという試合になるが、これは私から言わせればどっちが勝とうが全く面白くない。そしてそんな試合は間違いなく増える。というか、グループリーグやKOラウンドの序盤は殆どそんな試合になるのではないかとさえ思う。只でさえW杯は大陸間で実力のギャップが大きいのに、これ以上広がるのは好ましくない。
試合数も増えて大会が長期化するために、強豪国は益々大会序盤に力をセーブするようになるだろうから、大会の前半は観るに値しないような酷い試合が増えると予想される。むしろ、弱小国同士の必死の対決の方が楽しめるかもしれない。しかし、本来それは予選で十分だろう。
また、グループリーグは3チームを16組に分けて行うらしいが、1グループが4チームから3チームになった事で、グループリーグにおける戦略的な醍醐味は著しく低下した。更に各グループの最終戦が談合試合になる可能性が高まり、これはおそらく実際にかなりの確率で起こり得る。それを防ぐ為にグループリーグで引き分けを廃止して90分戦って同点ならPK戦で勝敗を決めようと言う案があるらしい。
もしそんな事が決定されればグループリーグは2勝か1勝1敗か2敗の3パターンしかなくなる。これはもはや悪いジョークのように思えるが、談合試合を防ぐ方法は多分それくらいしかない。これによってグループリーグでひたすらゴール前を固める弱小国に益々メリットが増える。90分ひたすら守り倒して耐え抜けば、あわよくばPKで強豪国を倒せる可能性があるからだ。しかし、世界最高峰の大会でそんな試合は本当に勘弁してほしい。
そう言う訳で、48チームに参加国が増えることによって、どう考えても試合の質の低下は免れない。中には、これまでW杯に縁の無かった国が参加できるのは素晴らしいという意見もある。確かにそれ自体は素晴らしい事だと思うが、参加することに意義があるのは寧ろオリンピックではないか。サッカーの世界最強国を決めるというW杯のステータスは間違いなく落ちた。
そうでなくとも、既にリーグ戦やCLの過密日程でスター選手たちは酷使され、W杯の時期にはクタクタになっている上に、欧州の代表チームは多民族化が進んでおり、ドイツ代表は何人かの選手はドイツ語が出来るのに国家も歌わない。私はせめて口パクでもしておけよと思うが、こう言うのを見ると代表戦の地位はそもそも低下していると感じる。
それはもちろんFIFAの問題ではないが、こんな状況でステータスの低下したW杯にスター選手たちが出たいと思うのであろうか。欧州の選手やチームがW杯をボイコットしても私は全然不思議ではないなと考えている。