今ドイツで躍進を遂げている政党と言えば、外国人に対する下品かつ差別的な主張、極端に保守的な政策を掲げるAfDがまず第一に思い浮かぶ。これらの右派ポピュリストの躍進はドイツだけでなく世界的な傾向であるので、既に多くの人が知るところであろう。しかし、ドイツでは最近その陰で記録的な支持率を叩き出している政党が存在する。それがいわゆる緑の党だ。正確には”Bündnis90/Die Grüne” =「90年連合/緑の党」という名称であるが、単に”Grüne”と呼ばれることが多いので「緑の党」とさせてもらう。
この緑の党はその名の通り、環境政党としてのイメージが非常に強く、それ故におそらく日本でも知られているだろう。その特徴としては、脱原発、自然エネルギーの推進、地球温暖化ストップ、資源の持続可能な利用などのエコロジー志向の他、難民の積極的な受け入れ、富の公正な分配、男女同権などを推進するリベラルな主張を掲げている。まさにAfDとは対極に位置する政党である。
しかし緑の党はその先進的な環境政策の一方で、当然のことながら現実を顧みない急進的、或いは理想主義的な政策も批判の対象となった。自然保護の為なら手段を選ばず暴力的な措置にまで出るいわゆる「エコテロリスト」の存在もある。そういう訳で決して万人受けするような政党ではない事も事実だった。その支持率は概ね10%程度の小規模政党である。
それが現在では支持率がおよそ18%にまでに達し、AfDを抜いてドイツ第2の勢力になっている。これは福島の原発事故以来最高の支持率だ。そして、この緑の党が最近多くの支持を集めている理由として、環境問題が再び社会でフォーカスされている事が挙げられる。
代表的な例はディーゼルによる大気汚染の問題であろう。知ってのとおり、クリーンだと謳われていたドイツのディーゼル車は、例のディーゼルスキャンダルで真っ赤な嘘だった事が判明し、現在では大気汚染の最大の要因として問題視されている。これは環境的にも政治的にも非常に深刻な問題と捉えられており、早急な対策が求められている。
これに関して緑の党はディーゼル車を都市部から排除すべきだと主張しており、これは私も含めたディーゼル車の利用者にとっては極めて都合が悪い。しかし、現状そもそもディーゼルに限らず車自体を減らす必要があることは多くの人がわかり切っており、この点において環境政党である緑の党の主張は急進的でもそれなりの正当性がある。少なくともこの期に及んで“Diesel ist super!”などと謳うAfDよりは遥かに時代に即している。
また、最近ドイツのエネルギー問題で極めて物議を醸した件として、大都市ケルン近くのハムバッハ森林地帯での褐炭の採掘が挙げられる。大手エネルギー会社のRWEはここで褐炭を採掘する鉱山を運営し、70年代以来そこで自生している樹林を伐採していた。この為当初4000ヘクタールあった森林地帯は現在では200ヘクタールまで減少した。