NL第3節:ヨアヒム・レーヴ、フランス戦の健闘で解任を免れる

昨日行われたUEFAネーションズリーグ第3節、パリで行われたフランス戦はドイツ代表の未来を占う上で極めて重要な試合になった。一つはこの試合に負ければ、来年のネーションズリーグにおいてリーグBへの降格が濃厚になる。

しかし、更に重要なテーマは監督のヨアヒム・レーヴが改革を進めるべきドイツ代表の監督として正しい人物かどうかだ。ドイツは日曜日にオランダによもやの0-3の完敗を喫し、内容的にも惨敗したロシアW杯から解決の兆しが見えなかった。そう言う訳で、このフランス戦は事実上ヨアヒム・レーヴがドイツ代表の監督の座に留まるか否かの運命を決める試合と見られていた。

そして、崖っぷちに立たされたレーヴはこの運命のフランス戦、遂にこれまでのシステム、メンバーを完全に変更する大ナタを振るった。まず守備ラインはズューレを中心に、左にフンメルス、右にギンターを配置した3バック、その前にクロースとキミッヒのダブルボランチ、左右のWBにシュルツ、ケーラーという若手、そして最前線はサネ、ニャブリ、ヴェルナーという快速の3人をFWに据えた3-4-3のシステムだ。

とりわけ、ここ数年のドイツ黄金期で最も充実していた2列目の攻撃的MFを廃したのは、過去に見られなかった思い切った戦術だ。つまり、ゴール前中央を固めた強固な守備から、前線の快速FWを生かした縦に速い攻めを志向しているのは明らかである。これで一旦は回帰すると見られた2014年W杯の形も完全に壊す事になった。もっとも、世界チャンピオンであるフランスの攻撃陣はその個人能力から言えば世界最強であり、まずは守備から入るのは当然の作戦とも言える。

試合が始まり暫くすると、この新システムの効果てき面と言わんばかりにドイツペースで試合は進む。フランスの守備陣はドイツの後方からの鋭い縦パスを警戒してか守備陣がかなり中央に寄っており、ドイツは両サイド高い位置で数的優位に立つことに成功した。更に守備でも激しいチェックでフランスの攻撃陣に自由を与えない。

そしてドイツは早くも14分、右サイドに飛び出したサネの折り返しがキンペンベの腕にあたりPKを獲得した。緊張の見えるクロースのキックはかなり甘かったが、ロリスが触ったボールはゴール右隅に転がり込みドイツが安堵の先取点を得る。

先取点を取り守勢に回ることが予想されたドイツだが、引き続き試合の主導権を握る。とりわけ、両ウィングバックのシュルツとケーラーが高い位置をとり、ボランチとFWとのコンビで次々とフランスの両サイドを攻略した。更にクロースを起点に大きなサイドチェンジや前線への鋭い縦パスを織り交ぜ、フランスの守備陣を翻弄する。

特に19分にサネがカウンターから飛び出した場面は決定的でドイツは2-0とするべきだった。フランスが後半に巻き返してくることを予想すると、取れる時に取っておくことが必要なのだが、これらの決定機を活かせないのがドイツの慢性的な問題である。とは言え、前半はここ数年で稀に見る非常に良い出来だった。完全にレーヴのプラン通りだろう。

後半に入ると予想通りフランスがギアを上げて攻めてくるが、フランスの攻めは個人技に偏った単調なものでドイツの守備陣を崩すには至らない。寧ろ序盤はスペースを得たドイツがテンポの良いパス回しでフランスをいなす。

唯一ドイツにとって前半から脅威となっているのはグリーズマンだ。グリーズマンは高いテクニックで狭いエリアでもボールを失わず、更に素早い反転と視野の広さで極めて嫌なスペースを付いてくる。その上キックの精度も高いので極めて厄介な選手だ。コンパクトな守備を保ち、このグリーズマンを中盤まで追い出してしまえばフランスの脅威はぐっと低下する。

しかし、後半も時間が経つにつれてフランスが力攻めで押し込む場面が増えてきた。そして62分フランスは遂に同点に追いつく。左サイドからのシュート性の強いクロスをそのグリーズマンがペナルティエリア後方からゴール右上隅に頭で決めた。あんな強烈なクロスを、あんな距離から、あんなコースに決められたらもうお手上げだ。フランスは何もないところから個人能力だけで得点を生み出すことが出来る。

その後は一進一退、速いテンポの非常に見ごたえのある展開になった。フランスはボールキープから個人技を活かして攻め込んでくるが、ドイツは組織的なプレッシングでボールを奪い逆襲を繰り出す。ドゥエルでもドイツがフランスに勝っている印象だ。ここまで戦うドイツは久しぶりに見る。ネーションズリーグも色々言われているが、このような試合はなかなか見られるものではない。少なくとも、グダグダのテストマッチよりは遥かに面白い。

しかしこの好勝負の決勝点はやや拍子抜けの形で決まる。79分、ペナルティエリア内でマトゥイディにタックルに行ったフンメルスがファウルを取られ、このPKをグリーズマンが決めた。これは確かに微妙な判定に見えたが、ビデオで見れば明らかにマトゥイディはフンメルスの足を踏んで転んでおり、完全なミスジャッジだ。ネーションズリーグはビデオ判定が採用されておらず、結局このドイツはこの不運な判定に泣かされフランスに敗れる事になった。

正直なところ、私はこの試合オランダ戦に続くドイツの惨敗を予想しており、それで一つの時代が終わるのも案外悪くはないと考えていた。しかし、終わってみればこの試合でドイツが見せたパフォーマンスはここ数年でも屈指の高評価を与えられるものであり、それだけに結果がついてこなかったのが悔やまれるものとなった。

そして、ドイツがなぜ内容で互角以上に渡り合いながら、勝利を得られない理由が何かと言えば、やはりこれまで毎度指摘されている決定力不足に行きつく。現状フランスは2、3度の決定機で1点を取れるのに対し、ドイツは10回くらいは決定機が必要だと印象である。これは当然監督が代わったところで直ぐに解決できる問題ではない。育成を含めた長い目で問題解決を図る必要がある。

そして、この試合で崖っぷちに立たされていたヨアヒム・レーヴであるが、敗れたとは言えこのフランス戦で予想外の健闘を見せた事により、ひとまず辞任の危機は脱したといえるだろう。とりわけ、ツキにも見放され、チームが明らかに自信を失っている状況で、選手を再び戦う集団に持ってきたのは評価できる。

また、レーヴはこの試合、これまで出場機会が無かった若手を起用することで、改革者としての側面を世間に見せる事に成功した。ニャブリ、ケーラー、シュルツ、ズューレ、サネと言った若手は期待以上の働きを見せ、今後に希望を持たせる内容だったと言って良いだろう。