今日は10月最後の日曜日、毎年恒例の夏時間から冬時間(通常時間)に戻る日である。時計の針が深夜の3時になると再び2時に戻され、1時間プラスされる。そういう訳で1日25時間となり一見すると得した気分になる。しかし、実際にはこれも春にある夏時間への切り替えよりはマシという程度で、むしろ調子は狂う。間違っても夏時間変更日のマイナス1時間の苦痛が、今日のプラス1時間で埋め合わせされると言う単純なものではない。
更にもう一つ、この夏時間から冬時間への変更に際して注意するべき点がある。それは、車で野生動物を轢いてしまう事故のリスクが急上昇することだ。ドイツ語ではこのような事故は”Wildunfälle”と呼ばれており、日本語では英語に倣ってこれは「ロードキル」と呼ばれている模様である。これは朝夕の車によるラッシュアワーの時間帯と、野生動物が活動する時間帯が重なることによるものだ。
一般的なドイツの車によるラッシュアワーは大体は7時過ぎぐらいで、日本よりも若干早いという印象を持っている。夕方は例によって多くの人は定時帰りするので17時ぐらいだろう。そしてこれらの時間帯が冬時間に戻った直後は、ちょうど日の出日の入りの時間、つまり野生動物が活発に活動する時間と重なるようになる。
とりわけ、専門家によると今年は特にこのロードキルのリスクが高いらしい。というのも、夏が非常に高温だったため、道路わきに立つブナの木が多くの実を成らせ、それが道路上に落ちている。これらの餌を求めて多くの野生動物が飛び出してくる危険が高いとのことだ。
また、これらの動物は車が危険であることを自ら認知しないので、こちらからクラクションを鳴らすなり、ライトをハイビームにするなどして対応しなければならない。特にシカはロードキルのリスクが高い動物と言われている。
もちろん、仮に時間変更がなくとも、このようなリスクは常にある。しかし、時間変更が存在することにより、年間でラッシュアワーと日の出日の入りの時刻が重なる時期が増える事になる。これに加えて、軽い時差ボケによりドライバーの集中力が落ちている事も考えれば、ロードキルが増えるのは当然と言える。
因みに、夏にEUによって行われたオンラインアンケートによると、84%もの回答がこの時刻変更の廃止を望んでいる事が明らかになった。この結果を受けて、EUは時刻変更の廃止に向けて動き出している。予定では、これまで通り時刻変更をしなければならないのは、来年の3月が最後になるとのことだ。次に来る冬時刻への変更は、EU加盟国がそれぞれの国で判断する。つまり、国によって年間夏時間にするか、年間冬時間にするかのどちらかに決定することになる。
しかしそうなると、夏時間を採用する国と冬時間を採用する国がEU内でごちゃまぜになる可能性があるので、それは何としても避けたいというのが共通認識だ。この点において各国はやはり足並みを揃える必要がある。しかし、ドイツに関しては国民の意向を受けて年間夏時間の導入が提案されている一方、ポルトガルなどは、これまで通り年に2回時間変更することに賛成の意を示している。つまり、例によって各国方針はバラバラになるので、簡単には行かないという事だろう。個人的には年間冬時間が好ましいと思っている。