元ドイツ代表のFWであるルーカス・ポドルスキのヴィッセル神戸への移籍がドイツでも真しやかに噂されている。もし実現すれば日本のクラブにとってはかなりの大物の移籍になるであろうし、この移籍は個人的には是非実現してほしい。そのポドルスキについて少し私の印象を記しておく。
ポドルスキが注目され始めたのは確か2004年だった。当時低迷していたドイツ代表の期待のホープとしてその年のユーロ2004にも出場した。その後は若くしてドイツ代表の主力となり、その才能はドイツ代表が当時低迷していた事を差し引いても一際輝いて見えたものだ。クラブでもデビューした1FCケルンで絶対的な地位を確立しアイドルとして持て囃されていた。
ポジションはFWで、若い頃は2トップの左FWで出場する事が多かったが、キャリアの中盤から2列目の左もこなすようになった。得意なプレーは、縦へのスピードを活かした強引な突破と左足での爆発的なキックだ。特に左足のキックは必見といって良い。全盛期は過ぎたかもしれないが、ポドルスキのパワーと精度は日本ではずば抜けた存在になるだろう。ポゼッションよりもカウンターアタック、或いはサイドからのクロスを中心としたクラシックな戦術のチームに合うのではないか。
個人的にポドルスキに関して非常に惜しまれるのは、極めて早熟型の選手であった事である。若くしてドイツ代表の主力となり代表の歴代最高キャップ数に届くかの勢いだったが、キャリアの中盤から伸び悩んだ。クラブレベルでもバイエルンやアーセナル、インテルといったビッグクラブではその才能に見合った結果を出す事が出来なかったと言って良いだろう。
これはポドルスキが類い稀なアスリートとしての才能を持っていた一方で、組織プレーに課題を抱えていた事にある。私が見る機会が多かったのは代表戦だったが、監督がレーヴになり、チームが高い技術を基盤にしたコンビネーションのサッカーに変貌を遂げると、ポドルスキはそれについていけなくなった。
守備力もお世辞にも高いとは言えず、出場しても逆にチームが停滞する場面も目に付き、ポドルスキの地位は目に見えて低下していった。とにかく本能や感性のみに頼ったプレースタイルであり、年齢を経てもそこから脱却できなかったと言える。代表での最後の数年は完全なベンチウォーマーだった。
とは言え、レーヴはポドルスキを誰が見ても完全なベンチウォーマーになったにも拘らず代表に呼び続けた。これは彼の底抜けに明るい性格によるものだと言われている。そしてそれはポドルスキのインタビューやピッチでのプレーを見れば伝わってくる。とにかく、明るく、図太く、あまり深く考えない、まるで子供のサッカー小僧のままのような性格は皆から愛されている。
このポドルスキの性格はサッカー選手としての彼の発展を妨げた要因であるかもしれないが、彼の人間としての魅力に他ならない。彼のような人間がいるだけでチームの雰囲気は明るく、選手はリラックスできる事は間違いない。
そのポドルスキが日本に移籍し、言葉やメンタリティが全く異なる日本人に囲まれて心地よく居られるかどうかは、私には全く予想もつかない。そして彼が日本の生活や文化に馴染む事が出来るのか、外国に住む人間として私は非常に興味がある。良くも悪くもポドルスキは、性格的には一般に思われている、真面目で実直、論理的なドイツ人というイメージとはかけ離れている。
彼は自身がポーランド生まれであるのに加え、既にイギリスやトルコと言った外国での生活を経ているので、異文化に対する免疫はある程度はあるはずだ。しかし、日本での生活は間違いなく彼にとって全くの別世界になるだろう。まだ移籍は噂に過ぎないので何とも言えないが、何れにせよ私も彼の日本行きのニュースを心待ちにしている人間の一人である。