昨日ドイツ対ロシアのテストマッチを観戦した。各国リーグ戦の前半も佳境に入る中、例年この時期のテストマッチはグダグダの内容で全く面白くない場合が多い。しかし、今年に限ってはドイツも適当に流す訳にはいかない。
ドイツは知っての通りW杯で惨敗し、新しく始まったネーションズリーグでもリーグBへの降格が濃厚な状況である。今年の戦績は3勝6敗2分けという強豪国とは思えない有様だ。ヨアヒム・レーヴも前回のフランス戦での健闘で何とか首を繋げたが、ドイツ代表の改革を実行する監督として相応しい人物か引き続き証明していく必要がある。
そのレーヴであるが、前回のフランス戦である程度機能した3-4-3のシステムを再び採用した。GKノイアー、3バックに左からリューディガー、ズューレ、ギンター、中盤は左からヘクター、ハーヴァーツ、キミッヒ、ケーラー、3トップにサネ、ヴェルナー、ニャブリと言う若手を主体とした布陣だ。
これでスタメンの平均年齢は24歳代にまでなった。フランス戦との唯一と言って良い戦術的な違いは、休養のクロースの代わりに、より前線に近い位置でプレーするハーヴァーツが入った事だ。つまりフランス戦より若干攻撃的なバリエーションになる。若干19歳であるハフェルツはこれが代表初キャップになる。
試合が始まって早々にドイツは激しいプレスで試合の主導権を握る。快速の3トップが入れ替わり立ち代わり縦のポジションチェンジを繰り返し、ロシアの守備陣を混乱に陥れた。早くも8分、中盤にまで下がっていたニャブリが相手守備陣の背後スペースにスプリントをし、右サイドケーラーからの決定的な縦パス呼び込んだ。この中央への折り返しをサネが決めて先制した。
更に縦への速い展開で試合の主導権を握るドイツは、25分のコーナーキックからズューレが2点目を決め、40分にはハフェルツのスルーパスからニャブリが3点目を決めて勝負を決めた。セットプレーからの得点は実に久しぶりだ。更にニャブリの冷静なコースを狙ったシュートも決定力不足に喘いでいた最近のドイツでは新鮮に映る。ドイツは前半で早くも勝負を決めた。
後半は一矢を報いたいロシアが開始早々2度の決定的チャンスを得るが、これは何れもシュートの精度が悪くドイツは事なきを得た。その後も前半消極的だったロシアが後半中盤でのコンパクトな守備でドイツを苦しめる。しかし、既に3点を奪ったドイツもリスクを冒すことなく互角の展開となった。後半も中盤を過ぎると両チームとも選手交代でテスト色、あるいは調整色の強い試合となり、試合はそのまま3-0でドイツが久しぶりの快勝という形になった。
ドイツは後半早々のピンチ以外守備陣が殆ど脅かされることなく、見どころが攻撃陣に集中した試合となったが、フランス戦に引きつづき若手が躍動したポジティブな内容のテストマッチだったと言える。
とりわけ、この日2得点に絡んだニャブリはロシアW杯後の最大の発見だろう。そのスピードも素晴らしいが、何より得点力が高い。私の中では絶望的な決定力不足に喘ぐドイツの救世主的な存在になりつつある。クラブでもFCバイエルンで定位置を掴みつつあり、ドイツ代表でもミュラーを押しのけてスタメンに定着しそうな勢いだ。
更にここに来て代表に徐々にフィットしつつあるのがレロイ・サネである。サネはその縦への早い仕掛けに因るボールロストの多さからW杯のメンバーから外れるという辛酸を舐めた。しかし、ドイツ代表がポゼッションから縦への速さを重視した攻撃にモデルチェンジしたことで、その圧倒的なスピード、ドリブルが活きるようになってきた。
そして最後に挙げたいのが、この日代表初キャップを記録したカイ・ハーヴァーツである。ハーヴァーツは若干17歳でブンデスリーガにデビューし、現在バイヤー・レヴァークーゼンに所属している。19歳の現在既にドイツ代表デビューを飾ったことから分かる通り、ドイツ期待の若手だ。
私はこのハーヴァーツのプレーを初めて見たが、左利きのトップ下、そのテクニックと視野の広さ、精度の高いパス、果てはその飄々とした仕草と言い、メスト・エジルにそっくりだと印象を持った。そして、調べてみればやはり、本人も相当エジルを意識しているらしい。
このハーヴァーツは再びスピードとフィジカルが重要視されるようになってきたドイツにおいて、そのテクニックで貴重なアクセントを与えてくれる存在になってくれることを期待したい。
ドイツ代表は月曜日に行われるネーションズリーグでのオランダと対戦が今年最後の試合となる。そして、これに先立ち本日行われるフランス対オランダでフランスが勝利すれば、ドイツは自力でのリーグA残留が可能になる状況だ。そうなれば、ドイツ対オランダの真剣勝負が見ることが出来る。ロシア戦で躍動した若手に加え、現在絶好調のマルコ・ロイスがどのように絡んでくるかが楽しみだ。