月曜日にネーションズリーグ、グループリーグの最終戦のドイツ対オランダを観戦したので、遅ればせながら感想を記しておきたい。残念ながら先立って行われた金曜日の試合でオランダがフランスに勝利したため、ドイツのグループリーグの最下位は既に決定している。つまりドイツの来年のリーグBへの降格が決定した。
しかし、この試合は決して単なる消化試合ではない。何故ならドイツはこの試合に勝てば、来年始まるEURO2020の予選抽選でポット1に入る事が確定するからだ。これでしくじってポット2に入るような事があれば、早くも予選段階でスペイン、フランス、ベルギー、イングランドなどの強豪国と対戦する可能性が出てくるので、それは出来れば避けたい。一方のオランダも、この試合引き分け以上ならフランスを抜いてネーションズリーグのグループリーグの勝ち抜けが決まる。両チームにとってそれなりに重要な試合だ。
ドイツは快勝したロシア戦と同様の3-4-3のシステムを採用し、スタメンもほぼ同じメンバーを送り出してきたが、若干の微調整があった。3バックの中央にはフンメルスを起用し、中盤には前回代表初キャップを飾ったハーヴァーツに代わってクロースが復帰した。更に前線の快速3トップもメンバーこそ同じだが、ヴェルナーとニャブリの位置を入れ替えた。
前線の3人のなかでは最もオールラウンドかつ得点力の高いニャブリを中央で活かすと同時に、縦への突破を好むヴェルナーはウィングの方が適しているとの判断だろう。サネはそのまま左ウィングに留まった。
試合は注意深く試合に入っていったドイツに対し、オランダは例によってドイツの司令塔であるクロースを序盤から徹底マークした。しかし、ドイツに関して言えば、この日中央に入ったフンメルスとキミッヒの配給力も高い。
この2人からフリーの選手にパスが入るとドイツの攻撃にスイッチが入る。何人もの選手が連動して縦へ動き出し、オランダ守備陣のスペースを次々に陥れた。攻守に高レベルの連動性を見せるドイツに対し、オランダは個人プレーが目立ち、チームとしての組織力に雲泥の差が見て取れる。
ドイツは9分にクロースが入れた楔の縦パスをニャブリがダイレクトで後方に流し、これを受けたヴェルナーが間髪入れずにミドルシュートを決めた。更に20分にはピッチ中央やや後ろでフリーでボールを持ったクロースが最前線のサネに一発のロングパスを通し、これもサネは即座にミドルシュートを放ち得点になった。
このサネのシュートは相手選手に当たりコースが変わった幸運なゴールだったが、試合展開から言えば妥当な得点だ。ドイツはポゼッション率こそ44%と低いがオランダに全くと言って良い程隙を与えない。オランダはドイツのパスの起点を抑えこむ事が出来ず、更に動き出しの早いドイツの選手の尻を追いかける回す展開だ。このまま2点をリードして前半を終える。
後半ドイツは若干ペースを落としてオランダが攻める時間帯が増えたものの、基本的な構図は変わらない。高度に組織化されたドイツに対し、オランダは個人プレーの集合体だ。ドイツは引き続きボールを奪ってからの素早い縦への攻めで3点目を決めるチャンスを得る。前線にロイス、ミュラーが交代で入るとややカウンターからポゼッション志向に切り替わったが、今度はコンビネーションからオランダのゴールを脅かした。
ドイツの選手には明らか余裕の色がみえ、試合展開から言ってもこの勝負はもはや決まったかに思われた。しかし、ドイツは最終的にこの3点目を取れなかった事が仇となる。
80分を過ぎると一矢を報いたいオランダが一か八かのプレスを高い位置でかけ始め、ドイツはズルズルと守備ラインが後退する。そして85分自陣深くでゴレツカがボールを奪われると、狭いエリアで足元パスを回され、ペナルティアークの辺りからプロメスに鮮やかなゴールを決められ1点を返される。
更にオランダは残り時間でなり振り構わない放り込み戦術を敢行し、ドイツの守備は突如自陣ゴール前付近でドタバタし始めた。そして後半ロスタイム、右サイドからのクロスをファン・ダイクに決められ同点に追いつかれ、そのまま試合は終了した。
今年最後の代表戦、ドイツは80分間は試合内容、経過から言っても今年一番と言っても良い出来だったが、最後の10分間で冷静さを失った。今年を象徴するかのようなツキのなさ、詰めの甘さがでた試合でもある。
試合後この日解説をしていたトーマス・ヒッツルスペルガーが言うには、ドイツの選手たちはまだ新たな戦術、システムで勝利できるという確固とした自信を得ていない。まあ、そういう事だろう。私的にはこの試合はW杯のベスト16で2点をリードしながら、ベルギーの力攻めに屈した日本と重なる部分もあった。
或いは、ドイツは結果を出すために90分間通して試合をマネジメントする段階まで到達していないと言う事だろう。直近の3試合はいずれも前半が非常に良い出来だった一方で、後半はやや尻すぼみの印象がある。
とにかく最初から飛ばして行けるとこまで行くが、試合終盤の最も難しい時間帯をどう切り抜けるかという意思統一がまだ出来ていない。これは戦術、メンバーを一新して間もないので、さすがに止むを得ないし、私個人としても現段階でそこまで期待はしていない。内容的にはポジティブな面が明らかに多かったので、先に繋がる試合ではあった。
しかし、来年始まるEURO2020予選に関してはドイツにとってはやや厄介な事態になった。この試合の後行われたポルトガル対ポーランドが引き分けに終わった為に、ドイツの抽選におけるポット1からの脱落が決定したからだ。ポット1はスイス、ポルトガル、オランダ、イングランド、ベルギー、フランス、スペイン、イタリア、クロアチア、ポーランドとなり、ポット2に入ったドイツはこのいずれかの強豪国と既に予選段階で戦う事になる。
10組に分けられたグループのそれぞれ上位2チームが本線に参加出来るため、ドイツがここで脱落する可能性は低いとはいえ、来年も気の抜けない1年になる。まあ、予選の段階で強豪国と手に汗握る試合を観戦できる事は、ファンとしてもポジティブに受けとめておきたい。