ディスカウントストアの隆盛にみる、ドイツ人の異常な効率の良さ

ドイツにはDiscounter(ディスカウンター)と呼ばれる店がそこら中にある。代表的なのはまずAldi(アルディ)であり、次がLidl(リードル)だ。ドイツでこの2つのチェーンを知らない人はいないだろう。日本語に習ってディスカウントストアとしておく。

基本的にアルディやリードルといったディスカウントストアでは食料品を中心に販売されており、その言葉通り商品はひたすら安い。我が家は近くにアルディがあるにも関わらず、安かろう悪かろうの偏見から長年利用する事がなかったが、3、4ヶ月前くらい前に久々に試してみたら、物にもよるが結構使える事が判明して今では毎週行くようになった。

そしてそこで買い物をすると、その圧倒的に安い価格と同時に、アルディがいかに無駄なコスト、時間と労働力及びストレスを削減することに心血を注いでいるかを感じる事ができる。

例えばまず店舗はいずれも大きくない。しかし、商品は入荷時のオリジナルの箱のまま極めて合理的にかつ分かり易く、取り出し易く配置してある。どこの店舗に行っても配置が同じだから一度行けば迷う事はまず無い。

また、商品数は必要な物に少なく絞られている。消費者にとって選択の余地はないが、何が売られているのかをすでに把握して来店するから時間もかからない。店舗側からすれば当然ながら在庫管理やこれに伴う人件費といったあらゆる管理費を抑えていることが伺える。

更にアルディのレジは圧倒的に速く、あっという間に順番がくる。またレジは小さくカートをはめ込める形になっており、商品をスキャンした後、即カートに入れられるように工夫されている。

そういう訳でアルディでは食料品を中心とした生活必需品を極めて安く買う事ができる。普通これだけ安ければある別の部分で絶大なデメリットが発生するのだが、アルディの場合そのデメリットが決定的な訳ではない。確かに商品のレベルは素晴らしくはないし、陳列は無機質でまるっきり季節感はないし、見た目の鮮やかさもまるでない。ただし、全て必要最低限受け入れられるレベルになっており、客を含めた現場の人間のストレスが発生しないようにしてある。普通のスーパーはこのために格安の自社ブランドを作って価格面で対抗している結果、ドイツの食料品の価格はヨーロッパでもかなり安くなっている。

そして、このアルディのようなディスカウントストアはドイツだけではなく世界に進出している。少し古いが2014年時点でアルディとリードルは同種のディスカウントストアとして世界で1位と2位の売り上げを誇っている、それもダントツだ。大きく引き離されているが3位もドイツのNetto、4位でやっとドイツ以外のアメリカのDollar General、5位はこれもドイツのPennyで、要するにこの種のディスカウントストアはドイツの専売特許みたいなものだ。

更に世界の全ての小売店の売上高で見ても、両者は世界のトップ10に入る。アルディは8位、リードルも同グループの小売店Kaufland(カウフランド)と合計すれば世界4位である。1位はダントツでアメリカのウォルマートだが、このドイツのディスカウントストアは自国でしか通用しないガラパゴスなビジネスではなく、完全にグローバルである。

そして私から言わせれば、このディスカウントストアはドイツ人の極限まで合理性を追求するビジネスの権化とも言える存在である。ドイツ人は個人レベルでは全然頑張っているように見えないが、少ない労力で大量の物品やお金を動かすシステムを作ることにかけては天才にさえ見える。

またドイツの企業が一般的に国際的に高い競争力を持っているのは、この異常に合理的なビジネスモデルで高いレベルの費用対効果を提供できる事にあるだろう。

ただし、ここ数年の景気も良さから、ドイツの消費者は食料品にも多くのお金を使うようになっただけでなく、ショッピングを楽しみたいという気質の変化も見られる。少なくとも国内においてはそのビジネスモデルに変化を迫られているのも間違いないだろう。