今年に入ってからもブンデスリーガで格下に苦戦の連続でまるで状態の上がらないFCバイエルンであるが、とうとう調子が上がらないまま、昨日チャンピオンズリーグKOラウンド初戦であるFCアーセナル戦に臨んだ。ホームで行われる第1戦は相手にアウェーゴールを許さない事が優先事項であるが、アンチェロッティ体制になってからの真価を問われる試合と言っても良く、私の中では手に汗握る拮抗した展開が予想された。
しかし、試合は前半から意外な程完全なバイエルンのペースで進む。同じパスサッカーをするチーム同士の対決であるが、そのレベルの差は一目瞭然と言って良いほどだ。アーセナルの中盤はバイエルンの中央でのパス回しにまるでボールを触らせて貰えない。更にバイエルンは後方のフンメルスがビシバシと中央を切り裂く縦パスを通し、アーセナルの選手は四六時中バイエルンの選手の尻を追いかける羽目に陥る。
更にバイエルンは右サイドのロッベンにボールが渡ると、必ずと言って良いほど後方からタイミングよくラームが駆け上がってくるから、1対1を仕掛けるロッベンの選択肢が増える。1点目はそのロッベンがラームにパスを出すと見せて得意の中への切り込みから見事な左足のシュートを決めた。
前半30分位にアーセナルはラッキーなPKを獲得し同点となりやや盛り返す。この前半30分あたりから終了までの時間帯が試合を通じて唯一アーセナルとバイエルンが対等だったと言える。ジャカの正面からのシュートや、エジルがノイアーと1対1となる好機を迎えるが、これを決めきれず同点のまま後半に突入した。
後半に入ると試合は再びバイエルンペースとなり、ラームのクロスからレヴァンドフスキが頭で決めて勝ち越した。その後はもはや完全にバイエルンの祭り状態になり、チャンスの雨あられで終わってみれば5点を決めて圧勝した。
アーセナルは前半に走らされた上に、守備の要であるコシェルニーが抜けるともうグダグダのサンドバッグ状態となり、なす術もなく敗れた。ここまでブンデスリーガでアンダードッグに苦戦を強いられていたFCバイエルンはアーセナルに苦戦をすると予想していたが、ここ一番で圧倒的な強さを発揮してくれた、見事である。私ごときのネガティヴな予想は完全に覆された。
但し、どう見てもアーセナルが予想外に弱かった事は付け加えておく必要がある。特にその消極的な守備はバイエルン贔屓の私から見ても酷かったと言える。アーセナルの守備は背後を取られるのを恐れてか、まるで相手との間合いを詰める事が出来ずバイエルンのパス回しに面白いようにあしらわれた。
特に1点目は得点者のロッベンにボールが渡るまで、実に1分間近く18本ものパスをも眼前で回されている。こんなやる気のない守備はお粗末としか言いようがないだろう。もともとスマートなサッカーを好むチームだと思うが、それを差し引いても戦う意思が非常に希薄であるという印象を持たざるを得なかった。ファンが怒り狂うのも当然であろう。
また、アーセナルがバイエルンと同じくパスサッカーを志向するチームという噛み合わせもあったのではないか。少なくともアーセナルに守備を固めてカウンターを狙う戦術をとるほどの戦術的柔軟性はない様に見えた。或いは今回はおそらくバイエルン相手にも自分たちのパスサッカーが通じると踏んで返り討ちにあったという印象がある。
前半30分時点での両チームのパスの本数はバイエルンが265本、アーセナルが43本。ポゼッションはバイエルンが73%だった。同じパスサッカーを志向するチームでこれだけの差がついたのだ。試合を通じて見てもバイエルンのスコア通りの完勝だった。
これでバイエルンの8強入りはもはやアーセナルとの2戦目を待たずして事実上決定した。但し守備を固めてカウンターを仕掛けてくる相手に対して今後どのような戦いぶりを見せてくれるかは依然として未知数であると言っておく。少なくともアトレティコやレアルはその守備力も決定力も段違いに優れており、バイエルンの弱点を容赦無くついてくるであろう。