給料が上がったが干される事が決定したルフトハンザ・パイロット

去年の11月の終わり頃、ルフトハンザ・ドイツ航空において大規模なストライキが実施され世間を騒がせたことはまだ記憶に新しい。この労使紛争は五年近くも続いており、不満を持つパイロット側は度々のストライキで経営陣に抵抗し、その度に多くの便が欠航し我々利用者は著しい不利益を被っていた訳だが、10日ほど前に経営側とパイロット側でひとまず給与面において合意がなされた。

この労使紛争に関して、経営側は2016年に2,4%、2017年に2,0%の合計4,4%の給料UPプラス1回限りのボーナス払いを提示し解決を図っていたものの、パイロット側は遡って2012から2017年まで合計22%の給料UPという常識外れの要求をしており、非常に交渉が難航していた。そこで去年のクリスマス前から名のある仲介人を立てて妥協点を探っている最中であった。

結果から言えば、パイロット側は2019年の終わりまでに4段階に分けて合計8,7%の給料UPプラス、一人当たり5000ー6000ユーロの1回限りのボーナス払いを得るという条件で合意に達した。さすがに22%のUPは余りにも常識外れなので無理とは言え、仕事を放棄し、自分たちのボスに文句を言う事に心血を注いだ結果、8,7%も給料が上がりボーナスまで貰える。しかし事はそう簡単には収まらない。

なぜなら、経営側は合意のしたのち間髪入れずに、新しく来る40機のルフトハンザ・マークで飛ばす予定の飛行機を同じグループ内の別会社に移管し、ルフトハンザのパイロットではなく、別のグループ会社の安いパイロットを利用すると決定した。そして、ルフトハンザの株価はこの決定の後上昇した。

もともとルフトハンザ・パイロットはルフトハンザがまだ国営企業だった頃に締結されている労働契約で貴族みたいな待遇を約束されており、同じグループ会社の他のパイロットよりも40%も多い給与を貰っている。この上に上記のような給与UPまで約束せざるを得なくなると、その損失分を安いパイロットの利用で穴埋めしないといけないと言う理由だ。要するに、給料UPの代わりに、高コストのルフトハンザ・パイロットたちは干される事が決定された。

そうでなくとも、経営側はこのルフトハンザ・パイロットが操縦すると契約上決められているルフトハンザマークの飛行機を徐々に減らし、別マークの飛行機で安いパイロットを将来的に利用しようという方針だったが、この流れがこれで更に急激に加速する事となったと言える。

つまり、この先操縦するルフトハンザ・マークの飛行機がハイピッチで減って行く事となると、このルフトハンザ・パイロットたちは余剰人員となり排除される可能性が高くなる。定年の近いベテランパイロットは逃げ切れるかもしれないが、中堅どころのパイロットにとっては死活問題だろう。ルフトハンザのパイロットになれば将来安泰と思っていたところが、ここ数年で自分たちの職が危うい状況になるかもしれないのだ。

もちろん、パイロット側はこの経営側の決定に激怒しているが、経営側はパイロット側に有利に妥協した場合、こう言った措置に踏み切る事は既に前々から予告しておいたので、それを無視してゴネ続けたパイロット側は自業自得と言える。周りを見渡せば格安航空会社ばかりであり、長期的に見ればどのみち高コストのルフトハンザ・パイロットは没落する運命は避けられないとは言え、理性的な交渉をしていれば経営側ももっと緩やかに注意深くそのピッチを進めただろう。常識的に考えれば、急激な経営路線の変更は本来経営側にとってもリスクが高く、多きな負担になると思われるからだ。

しかし、時代の流れを無視して無謀な喧嘩を挑んでしまったパイロット側は短期的な給料UPと引き換えに、近い将来の自らの仕事自体が奪われるリスクが高くなった。この労使紛争に関しては給与面以外にも解決すべきテーマが残っており、パイロット側はそれらのテーマで更なるストライキをする可能性があるが、争えば争う程パイロット側は自分たちの死期を早める事になる。いずれにせよ、ルフトハンザのロゴのついた飛行機を目にする事も今後速やかに減っていくだろう。