ある家族が2015年の10月イスタンブールでのバカンスの為に飛行機に乗るべくミュンヘン空港を利用したところ、セキュリティーチェックの長蛇の列の為に飛行機に乗り遅れたらしい。
この家族がチェックインを済ませセキュリティーチェックに向かったとき、そこには既に長蛇の列ができており、この時12:22、ボーディングタイムが13:05、出発が13:40。家族はこのままだと飛行機に乗り遅れる可能性があることを空港の職員に伝えたが、この職員は大丈夫だと言ったそうだ。しかし、結局この家族は不幸にも飛行機に乗り遅れてしまうこととなった。
この家族は相当運が悪かったとは言え、一般的にはこう言った場合に備えて乗客は空港には早めに到着してセキュリティーチェックを済ませておくというのが常識であり、普通ならチケットを取った航空会社のルールに従って処理をされて終了だ。しかし、この家族はこれを不服として、これに伴って生じた便の変更などの費用(約613ユーロ)を取り戻すべくミュンヘン空港の運営者を裁判所に訴えたのである。
そして判決は、この家族が飛行機に乗り遅れたのは主に空港側に責任があるとして、費用の80%を負担すると言うものであった。つまり裁判所に言わせれば、空港側は乗客が飛行機に時間通りに搭乗できるようセキュリティーチェックを効果的に実行する義務があり、今回この家族の件に関して言えば、空港側はそれを十分に果たさなかったと言うことだ。そういう訳で、この判決はこれまでの常識を覆すものだと言えるだろう。
私も率直に言ってこの判決には少々驚いた。というのも私自身もこれまで2度ほど本気で飛行機に遅れそうになったことがあり空港の職員にアドバイスを求めた事があるが、まるで我関せず的な対応にムカッときた事がある。しかし、職員がどんな対応をしようが、飛行機に乗ることに関して言えば、乗客は空港の客ではなく、航空会社の客だから、そもそも飛行機に乗り遅れようが空港側に責任を問う事は出来ないと私は考えていた。事実、空港運営者側も同じような理屈で反論したらしいが、これも認められなかった模様だ。
もちろん、このような場合、誰に責任があるかというのは状況によって異なるし、あくまでも乗客が十分に早い時間に空港に到着しておくのが大前提ではある。昨今の世界情勢から言えば、セキュリティーチェックに時間がかかるのは避けられ無いであろう。また今回この家族に2割責任があるのは、彼らもセキュリティーチェックの際に前の人にお願いして先に行かせて貰うなどの自発的な対応ができたからだ。私が遅れそうになった時は、そのようにして事なきを得た。
しかし、今回空港側に8割責任があるという判決が下されたことで、今後空港側も飛行機の搭乗に関して利用者が困っていたら少なくとも無関心ではいられなくなる。 これまで空港側は乗客とは何の契約関係も無いから責任を取らなくても良いとタカを括っていたから、明らかに飛行機に遅れそうなのに、困った利用者に我関せず的な対応をしたり、何の根拠もなく大丈夫だとか言ってその場を取り繕おうとするのだ。はっきり言えば、ドイツのサービスが徐々によくなっている事を感じつつある中でも、ミュンヘン空港職員のサービスの悪さはこれまでの経験から言って絶望的なほど低レベルだ。今回の判決を機にこれが若干でも変わる事を期待するものだ。