サマータイム制度の最大のデメリットは、健康上の負担であろう

明日からドイツはサマータイムが適用になる。時刻を通常時間より1時間ほど進め、つまり日の出、日の入りが時刻上それぞれ1時間ほど遅くなるという事だ。これにより、夕方遅くの時刻まで外が明るいということになる。6月の一番日の長い時期では大体日の入りが9時半ぐらいだ。言うまでもなく、明るい時間が長ければ比較的遅い時刻まで野外活動が行う事ができる。そう言う意味では私もサマータイムのメリットは感じている。

しかし、当然のことながら、明日のようなサマータイムへの切り替えの日は時計を1時間進める訳だから1日23時間となる。深夜の2時が飛ばされ、1時から一気に3時になる訳だ。これにより体内時計が若干狂う。つまり軽い時差ボケ状態となり、体が怠くなり集中力も散漫になる。勿論、逆にサマータイムから通常時間に戻る日は1日25時間となり一見すると得に感じるが、むしろこれも結果として調子が狂う。大人でもリズムが狂うのだから、子供など余計に対応が難しい。

もちろんこれには個人差があるし、たかだか1時間だと思われるかもしれない。しかし、サマータイムに切り替わった直後は身体の不調を訴える人間が25%以上増え、心臓発作のリスクが上昇する事が判明しているだけでなく、睡眠障害やうつ病も増えると言われる。更にそれに伴い交通事故も増えるという統計が出ている。これは人間だけでなく、野生動物の活動が時刻変更に対応していないことにもよる。

私にとってもサマータイムの存在はドイツに来た当時は海外の風情と思えたが、長く住んでいると年に2回も強制的に体内時計を狂わされるのは苦痛以外の何者でもないと思うようになった。同じ時差ボケでも基本的に自分の好きな事をして過ごせる旅行など異なり、普段通り他人の都合に合わせて仕事をしなければならないストレスは大きい。そして、周りの人間も同様のストレスを抱えているのだ。

更に、このサマータイム制度は1977から続けられており、誰の頭にも入っていると思いきや、毎度確実に社会はこれにより混乱する。少なくとも公共の交通機関に乗り遅れたり、アポイントの時刻をうっかり間違えたりするリスクは確実に上がる。バイエルン州の首相であるホルスト・ゼーホーファーは数年前メルケルとの電話会議にこれで寝坊した事がある。最近の電子機器は自動的に時刻が切り替わるようになっているが、それでも多くの時計は手動で1時間進めてやらなければならない。これも面倒臭い。

そもそも、サマータイムの本来の導入目的は、一日の明るい時間を長くする事によって電力消費量を節約する事にあった。しかし、これには意味がないどころか、逆に余計に消費する事が明らかになっている。なぜなら、サマータイムのせいで朝起床時の気温が通常時刻の場合よりも低くなるため、余計に暖房による電気を消費するからだ。

以上のように、サマータイム制度はトータルで見ればデメリットの方が多く、アンケートによるとドイツ人の大多数がこの制度の廃止を望んでいる。しかし、この制度を廃止するのは今のシステムでは極めて難しいと言われている。なぜなら、これはドイツの一存で決められる事ではなく、今となっては巨大化したEUの管理事項だからだ。つまり、この制度を廃止するにはEUに加盟する他国と足並みを揃える必要がある。要するにこれが極めて面倒臭いのだ。

因みに、日本でもオリンピックに向けてサマータイムの導入を検討しているようで、そう言うアイデア自体は別に非難するべきものではない。但し、あまり日本では指摘されていないようだが、私が思うサマータイム制度の最大のデメリットは、最初に挙げた時刻変更による健康上の負担増だ。たかが1時間の時差を甘く見ない方が良い。日本はただでさえ夜型のライフスタイルの人が多いから、サマータイムへの時刻変更の際にはその影響をもろに受けるだろう。