ドイツはBundeswehr(ドイツ連邦軍)と呼ばれる戦力を有している。自衛と国際的な紛争解決の補助などを主な任務としており、ドイツでは数年前までは徴兵制が施行されていた。現在は私が知っている限り志願制になっている。
先日そのドイツ連邦軍内のとある将校がテロを企てたとされて逮捕された。この将校は右翼過激思想の持ち主で、シリア難民に扮して身元を誤魔化しており、既にテロの標的にすべき人物や組織などのリストが作成されていた模様だ。
当然これだけでも世間を揺るがす大問題であるが、元々ドイツ連邦軍内にはこういった過激右翼思想が蔓延していたとされており、根本的な解決を迫られる事態となっている。このテロを企てた将校に関して言えば、大学の修士論文において既にそういった思想を持っている事が明らかになっており、ドイツ連邦軍もそれを知っていたとされている。というよりニュースを聞く限りどうもそれを軍内でそれほど問題視されていなかった模様だ。それどころかテロが軍内の一部の連中による組織的な計画である可能性も浮上している。
この事態を受けて防衛相のウルスラ・フォン デア ライエンは各方面から強烈な非難に晒されており、彼女はこの間のインタビューでドイツ人にしては珍しく自己批判的なコメントを出してこの問題を解決に取り組む事をを明らかにし、予定されていたアメリカ訪問も急遽キャンセルした。この問題が如何に大きいか示していると言える。最近のニュースでこの件を聞かない日はないくらいだ。
しかし、最近はテロと言えばイスラム過激派というのが定着してしまった感があるが、このいわゆるネオナチと呼ばれる右翼過激思想をもった暴力的な連中を忘れてはならないだろう。個人的に私はイスラム系の出で立ちを見ても何とも思わないが、スキンヘッドに長靴は圧倒的に怖い。最近ではネオナチの風貌も多様化してきたらしいが、何れにせよそう言った連中が本来国を護るべき連邦軍の中にいるのは大問題であろう。それも少数ではなく本当に山ほど居るらしい。
もともと軍隊とはそう言った右翼思想を持った者をを惹きつける組織であり、組織が右翼化しているのはドイツが徴兵制を廃止して志願制にしたのにも一因があると言われている。連邦軍の兵士が主に軍隊的な序列や兵器、制服などに憧れた者のみで構成されるようになってきたからだ。
徴兵制が無くなったのは普通の若者には明らかに朗報だろうが、どうやら単純に喜ぶような事態ではなさそうだ。替わりに自国でテロを起こすような右翼過激思想が蔓延する防衛戦力など誰も望んではいない。今後の調査によりドイツ連邦軍の暗部が炙り出されていき、組織の根本が見直される事は間違いないだろう。