ドイツで最大の航空会社は言うまでもなく、ルフトハンザ・グループである。第2位はエア・ベルリンだ。ルフトハンザはその度重なるストライキにより一時世間の評価を落としたが、現在圧倒的に評判が悪いのはエア・ベルリンだろう。と言うより、エア・ベルリンの場合単に評判が悪いと言うレベルを超えて会社自体が存続の危機に立たされている。
まずエア・ベルリンがつい最近起こした有り得ない事件を紹介する。エア・ベルリンは5月21日にデュッセルドルフからシュトゥットガルト行きの飛行機の飛ばす予定としていたが、何と搭乗直前に乗客によって機体の壁に穴が空いているのが発見された。その乗客がこれを地上員に指摘したところ、スタッフを信頼するよう説得を試みられ、更にパイロットも飛行に問題がないと判断し、飛行機をそのまま飛ばそうとしたらしい。納得がいかない乗客の抗議によりその飛行機はキャンセルされ、2時間後に別の提携航空会社の飛行機で飛行した。
飛行機に穴が空いているのも勿論有り得ないが、それが乗客に発見され、しかもその状況でどうやってスタッフを「信頼」できるのだろうか。誰が何と言おうとそんな飛行機で飛びたくないのは当たり前だ。もしこれが事実ならお粗末な対応にも程があるだろう。これ以外にも遅延や、荷物の紛失など最近はエア・ベルリン関連の醜聞を聞くことが多い。
そして、そのように評判の悪い航空会社は当然それなりの業績が残っているのだと納得できる。エア・ベルリンの赤字はここ数年で膨らむ一方で2016年の決算では7,8億ユーロの赤字を記録した。これは私のような庶民にはピンとこない数字であるが、これは日換算すると毎日214万ユーロ(約2億5千万円)の損失を出しているのと同様である。
更にそのペースは2017年の第1四半期は毎日320万ユーロ(約3億8千万円)に上昇した。シュピーゲル・オンラインはエア・ベルリンの飛行機を”Geldverbrennungsmaschine”=「金を燃やすマシン」と形容しており、なるほどと思われる。飛行機を飛ばす度にガソリンと同時に金を燃やしているも同然と言うわけだ。
実際、このエア・ベルリンが命脈を保っているのは今の所大株主であるエティハド航空がエア・ベルリンを見捨てず資金を提供しているからに他ならないと言われている。しかし、将来的にはルフトハンザがこのエア・ベルリンの買収に興味を示しているとされ、つい最近ルフトハンザのCEOがエティハド航空とその件で会合したそうだ。
これに際しもっとも大きなネックとなっているのはエア・ベルリンの約12億ユーロに上る多額の債務であり、これをエティハド航空がまず解決することが前提になるとのことだ。何れにせよエア・ベルリンが今の状態のまま存続していくことは不可能だと見られている。