ドイツ鉄道、26年越しの新路線開通プロジェクトを実現させる

先週、ドイツ鉄道の歴史的とも言える超巨大プロジェクトの実現が間近であることが発表された。これは、ベルリンーミュンヘン間の新路線の開通であり、1991年に始まったものだ。これに伴い、現在は6時間かかるミュンヘンーベルリン間は12月から最速3,55時間で到達できるようになる。実に26年間に渡って100億ユーロを投資、29本の橋を建設し22箇所にトンネルを掘り、ついにドイツ鉄道が格安航空会社を上回る強力なオファーを提示してきた。

現時点で言えば、少なくとも出張であればミュンヘンからベルリンに行くなら飛行機で行くのが現実的だろう。その飛行時間はおよそ1,5時間である。価格は通常でルフトハンザなら往復500-600ユーロ、エア・ベルリンなら400-500ユーロである。しかし、市街にある目的地から空港までの移動、更に空港には早めに到着しなければならないので、トータルで見れば4時間以上はかかる。

しかしこれがICEであれば、たとえ同じくらいの移動時間でもはるかにメリットが大きい。まずICEが乗せられる乗客の数は飛行機に比べて格段に多いだろう。価格は現時点ではミュンヘンーベルリン間の往復で268ユーロだ。多少値上がりがあったとしても、飛行機を上回ることは考えられない。さらにICEなら移動中は無料の無線LANがある。

そして、この路線開通で得をするのはミュンヘン−ベルリン間だけではない。ミュンヘンからドレスデン、エアフルト、ライプツィヒ、ハレといった東ドイツの主要都市までは軒並み1-2時間の短縮が実現される。これらの都市には飛行機よりも車で行くのが現実的だったが、これにICEで行くという選択肢が加わった。

因みに、ミュンヘン−ベルリン間の距離は約600kmである。この距離を4時間と言うのはそれ程速いとは思わないかもしれない。調べたら同じ程度の距離である姫路-東京間を新幹線なら3時間ちょっとで移動できる。時間だけでなく、その他のサービスに対するコスパからいっても新幹線はICEより遥かに優れている。26年と言う長期にわたる期間や、100億ユーロとも言われる巨額の投資も予定より大幅に上回った。

しかし、これまでのドイツ鉄道のクオリティを知っている人間にすればこのプロジェクトが実現間近に漕ぎ着けた事は大幅な前進であると言えよう。例によっての遅延や欠便さえ最小限に減らすことができれば、ドイツ鉄道の存在価値は多くの人にとって大きく上がることは間違いない。エア・ベルリンの経営危機、アウトバーン通行料の導入や、ディーゼル車の締め出しなど、ドイツの交通事情は大きな過渡期を迎えているという印象だ。